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パウル・クレー展-おわらないアトリエ
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 6月 11日

《花ひらいて》1934,199
カンヴァスに下地・油彩、81.5×80.0㎝
ヴィンタートゥーア美術館
Schenkung Dr.Emil and Clara Friedrich-Jezler, 1973
ⓒ Schweizerisches Institut für Kunstwissenschaft, Zürich, Lutz Hartmann

スイス生まれの画家パウル・クレー(Paul Klee, 1879-1940)は、長らく日本の人々に愛され、これまでにも数多くの展覧会が開催されてきました。「創造の物語」や「旅のシンフォニー」または「線と色彩」などの副題が示すように、作品の物語性や制作上の理念が詩情豊かに詠われたそれら展覧会は、多くの人々にクレー芸術の魅力を伝える大きな役割を果たしました。このたび、京都と東京の国立近代美術館で初めて開催されるクレー展では、今までの展覧会成果を踏まえた上で、これまでクローズアップされなかった観点、「クレー作品が物理的にどのように作られたか」について考えます。

クレーは1911年から終生、制作した作品のリストを作り続けました。1883年、画家4歳のときの作品を手始めに約9600点もの作品からなるこのリストには、作品のタイトルだけではなく、詳細な制作方法が記載されていることからも、「どうやって作ったか」は、この芸術家にとって極めて重要な関心事だったのです。その「制作プロセス」を、クレーは、アトリエ写真という形で記録に留め、自ら「特別クラス(Sonderklasse)」とカテゴリー分けした作品を模範作品として手元に置くことで、反芻し続けました。

ベルンのパウル・クレー・センターが所蔵する作品を中心に、日本初公開の作品が数多く含まれる約170点で構成される本展覧会では、このアトリエ写真で記録された作品そして「特別クラス」という模範的作品を紹介する章と、制作上の具体的な技法を検証する章からなる6つの章によって、クレー芸術の創造的制作過程を明らかにすることを目指します。クレーは、芸術そして芸術家の理念的なあり方だけではなく、芸術が、とりわけ芸術家の手によって、具体的にどのように作られるかを、生涯にわたって追求し続けました。この彼の問題意識を検証することは、レディ・メイド誕生以降今日にいたる芸術の諸相を考える上で、新たな生産的批判的視座を提供してくれるものと考えます。

※全文提供: 東京国立近代美術館


会期: 2011年5月31日(火)-2011年7月31日(日)
会場: 東京国立近代美術館

最終更新 2011年 5月 31日
 

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