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伊藤彩:穏やかに臭う
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 6月 11日

《ゾンビも恋をする 》2010年 | 画像提供:小山登美夫ギャラリー | Copyright© Aya Ito

作品紹介
伊藤彩の作品にはゾンビやお化け、そして「ケツの穴」などの「アーティスティックではない、ガキみたいな下ネタ」のモチーフが登場します。鑑賞者はまず驚き、笑い、そして彼女が思いつくまま奔放にこれらを描いているのかと考えるかもしれません。しかし独特の空間性をもつ伊藤の作品は、様々なプロセスを経て構成されているのです。伊藤は作品ごとにマケットを作り、写真を何枚も撮りながら視覚的効果を検討したのち、ペインティングを制作するという「フォトドローイング」と彼女が呼ぶ手法をとっています。「日々の経験に妄想や空想を加えたもの」を動員しながら進行するこのプロセスのなかで起こる偶然性、それを伊藤はある種の濃密なリアリティへと変換させます。「ゾンビも現実の一部となって、同じ世界に住んでいるような立場にしたい」。物語性が無く、あったとしても無意味であるという彼女の作品のもつリアリティは、鑑賞者の意識を取り込み、異化するように思えます。

伊藤は「イメージよりも写実、そして単なる写実よりもコラージュに惹かれた」と言います。ペインティングだけでなく、立体、インスタレーション、写真といった様々な要素を縦横に使うことで、伊藤は独自のリアリティにアプローチします。

展覧会について
本展は、上述の「フォトドローイング」のプロセスを用いて制作した、人がモチーフの油彩の新作ペインティング4、5点と、ドローイングを展示いたします。ドローイングはこれまで、「フォトドローイング」の材料として切り取って使用、あるいは立体の制作のために描いていましたが、作品として発表するのは今回が初めてです。タブローとドローイングの境界線をできるだけなくすために、展示にも工夫を加える予定です。

物語性よりも作品がもたらす雰囲気を重要視する伊藤は、今回の展覧会にはテーマは設けず、作品については「穏やかでシリアスでシリーな感じ」で、「『感じ』の部分を大切にしたい」と話します。是非ご高覧ください。

作家プロフィール
伊藤彩は1987年和歌山県有田市生まれ。2009年、京都市立芸術大学美術学部油画専攻卒業。同大学大学院美術研究科絵画専攻を今年3月に修了。「Art Camp in Kunst-Bau 2007」(サントリーミュージアム[天保山]、大阪)でサントリー賞、「アートアワードトーキョー丸の内 2009」(行幸地下ギャラリー、東京)で準グランプリを受賞、2010年度京都市立芸術大学作品展で大学院市長賞を受賞。

主な個展に「生まれつきJ」(Art Jam Contemporary、2009年、東京)、主なグループ展に「モンブラン ヤングアーティスト パトロネージ イン ジャパン」(モンブラン銀座本店、2009年、東京)、「VOCA 2010 新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、2010年、東京)、「レゾナンス 共鳴 人と響き合うアート」(サントリーミュージアム[天保山]、2010、大阪)があります。また7月3日〜31日に開催の「アートアワードトーキョー丸の内2011」にも出展します。小山登美夫ギャラリーでは、2010年6月のTKGエディションズ京都での個展に続き、二度目の個展となります。

全文提供: 小山登美夫ギャラリー


会期: 2011年6月11日(土)-2011年7月16日(土)
会場: 小山登美夫ギャラリー東京 6F

最終更新 2011年 6月 11日
 

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