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川城夏未 展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 5月 31日

画像提供:Oギャラリーeyes | Copyright© Natsumi Kawashiro

東日本大震災で被災された方々、原発の問題で不安な日々を送られている方々に 心よりお見舞い申し上げます。
微力ながらも少しでも何か出来る事はないかと考える毎日です。

以前は、油えの具の層を削り取って形を描いていましたが、最近では上から描き足す事をしています。
描いては消しまた描いては消し、と制作を重ねる中で、次第に作品と自分との距離は近くなってくる感じがあります。
えの具を染み込ませた麻の赤い地を残す事によって、私の中ではじめて色の持つ質感と考えていた赤という色が、赤い色として認識されたようです。
その時から心が開放され、また新たに絵を描く事の喜びを知ったようにも思えます。

川城夏未
1968年、神奈川県生まれ。
1992、女子美術大学洋画科を卒業。1995年、東京芸術大学美術学部大学院油画科修了。
1996年、Oギャラリー(東京)にて初個展を開催(以降、同ギャラリーにて多数開催)他、不二画廊、Oギャラリーeyes、Platina Otto(東京)、神奈川県民ホールギャラリー(横浜)、Gallery Bar Kajima(東京)、砂翁&トモス(東京)、ギャラリーHIRAWATA SPACE2(神奈川)、ギャラリー新九郎(神奈川)、元麻布ギャラリーカフェ茅ヶ崎(神奈川)等にて個展を開催。1999年、Contemporary young painters exhibition from Japan(Gallery 21・バングラデシュ)に出品。2000年神奈川県美術展(神奈川県民ホールギャラリー・神奈川)では大賞を受賞。2001年、関口芸術基金賞展(柏市民ギャラリー・千葉)では優秀賞を受賞、TAMA VIVANT 2001(多摩美術大学、他・東京)。2003年、第12回吉原治良賞美術コンクール展(大阪府立現代美術センター・大阪)。2004年、若手アーティストによるカラフルおもちゃ箱展(新宿小田急百貨店・東京)2010年、Toyota art conmpetition(豊田市美術館・愛知)他、多数のグループ展に出品。

全文提供: Oギャラリーeyes


会期: 2011年5月30日(月)-2011年6月4日(土)
会場: Oギャラリーeyes

最終更新 2011年 5月 30日
 

編集部ノート    執筆:平田 剛志


画像提供:Oギャラリーeyes
Copyright© Natsumi Kawashiro

    バラが咲く季節、街角で真紅のバラを見かけることがある。詩人の北原白秋は「目を開けて つくづく見れば 薔薇の木に 薔薇が真紅に 咲いてけるかも」という短歌を残している。これは、薔薇の木に薔薇が咲くあたりまえの状態を「つくづく見る」ことで真紅の薔薇が咲くことを発見したといえる。それは、バラに限らず絵画もまた同じといえよう。例えば、一見すると赤一色の絵画に見える川城夏未の絵画もまた「目を開けてつくづく見」なければ、絵画に描かれた「赤」が見えてこない。
    だが、川城の絵画は、「赤」という一語では言い表せない、豊富な「赤」がある。その制作工程は、キャンバス全体に赤色を均一にステイニングし、画面の5~7割ほどの面に蜜蝋を混ぜた油絵具を再び塗り重ねることで、同じ赤でも異なる赤の層が同居する画面となっているのだ。蜜蝋と油絵具の層がわずかに厚みを帯び、地のステイニング層の境に山の稜線のような赤い輪郭線を作り出している。さらに、油絵具の層の上には赤のパステルで抽象的なイメージの描画がなされ、赤い画面に赤いドローイングが施される。均一な赤の色面に施された赤のパステルの線が、空間にイメージと奥行きを生み出し、深みのある絵画空間を作り出している。
    美術作品は、実際の作品を見ないとわからない。とくに、抽象的な作品の場合はそうだ。川城の描く絵画は、写真では赤色の淡い諧調、質感が再現されず、その色彩空間を感じることが極めて難しい。バラの木にバラが咲くのと同じように、キャンバスに絵画が描かれることはあたりまえだが、「目を開けてつくづく見」ないと気づかない絵画の美しさを見てほしい。


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