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キャメロン・マーティン:沈黙の価値
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2008年 12月 06日

Cameron Martin "Falscone" (2008) | copyright(c) 2008 Cameron Martin | Courtesy of GALLERY MIN MIN

今回のキャメロン・マーティンの一連の作品は、岩石や石灰化された木々等の写真をもとに作家自身が風景を作り上げ、それをモノクロームで書いたものです。一見写真と見紛うような精密な描写と視覚的喜びを携えた画面の密度は、鋭敏な目とコントロールされた筆遣いの賜物であり、その手法からうかがえるように作家の関心は複製可能なイメージ(写真や印刷物)と絵画との境界を複雑化することにあります。しかしながら彼の策略とは裏腹に、彼が作り上げた破壊的とも言えるイメージには、絶望的な美しさが有無を言わさず鎮座しています。

一方もう一つのスペースでは、キャメロン・マーティンキュレーションによるグループショーが展開されます。「沈黙の価値」と名づけられた展示は、近年のコンテンポラリーアートにおける大作主義やメタアートと括られるような潮流に一石を投じる試みとなるでしょう。この展示のために集められた作家たちはアート・メイキング事態に赴きを置くもの達であり、表立った共通項が見えないかもしれません。それぞれの作家の異なったアプローチは、アートを作るという繰り返される過程の中で各作家固有に根付いた葛藤と強く結びついています。作家達は声高に発言することを静かに拒み、沈黙を守ることで存在を際立たせています。この展示の中で、何も語らないことが逆説的に最大の声明になりうるとマーティンは考えているのです。

作家自身の作品による展示と、その作家が他の作家を使って構成する展示を同時に見ることは、その作家の美意識を多面的に感じ取れる絶好の機会となることでしょう。絶望的な風景の先にある美しさ、様々な葛藤の中で築き上げられた純粋さと意思。マーティンは私達にアートという名の希望をもたらしてくれます。

※全文提供: ギャラリーミンミン


会期: 2008年11月28日-2008年12月28日
会場: ギャラリーミンミン

最終更新 2008年 11月 28日
 

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