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宮澤男爵 ・ 古林希望:消息 / comings and goings
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2008年 12月 14日

宮澤男爵 《bito-bito no.1》2008年、紙(NTラシャ)、鉛筆、66.5x48.5cm copy right(c) Danshaku Miyazawa / Courtesy of TOKYO GALLERY + BTAP

両者はともに東京ワンダーサイトが主催する公募展「ワンダーシード展」で入選を果たした新鋭作家です。その後、両作家との話し合いを重ね、今回の二人展を開催するに至りました。本展では新作を展示し、彼らの創作の現在の展開をご覧いただきます。 宮澤と古林の作品に用いられる素材と技法は、互いに似通った性質を持ちます。宮澤は鉛筆と水彩を使って、中性紙に薄くて淡い人の形を描きます。イメージは無数の丸や点で構成され、形象が泡となって画面上に現れるようにも、消えていくようにも見えます。そして、鉛筆で引かれた細い輪郭線が辛うじて画面上の空間の領域を保ちます。

一方、古林は短い毛が細かく立っている紙の上に、細胞のようなイメージを鉛筆で描きます。宮澤と比べて強い筆致ですが、桃の肌のように柔らかい紙の表面が筆跡を和らげ、見る者にその感触を感じさせます。いくつもの細胞が花の形を形成するように画面上に散在し、増殖しているようです。

両作家の作品は、いくつもの細かい線と丸によってイメージが形作られており、描かれた存在の軽さが際立ちます。イメージは画面上に定着せず、絶えず何かが動いているような印象を受けます。今回の展覧会のタイトルにもなっている「消息」ということばは、中国の古代思想に由来し、「消」は陰気が消えること、「息」は陽気が生じることをそれぞれ表します。陰気、つまり吸う息が極まって絶えるときがそのまま、陽気、吐く息の生まれてくる契機となります。この瞬間に、生命の循環の不思議が凝縮されている、ということでしょう。 増殖するようにも消失するようにも見える無数の点によって、軽妙なイメージを表出させる両作家の作品を、是非この機会にご覧下さい。

※全文提供: 東京画廊+BTAP

最終更新 2008年 12月 03日
 

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