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長谷川冬香 個展:キラり
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2008年 11月 28日

copyright(c) Fuyuka Hasegawa.| Courtesy of YOKOI FINE ART

私は描くモチーフを室内のものにこだわっており、皮膚が家とつながっていくかのようなその表現に感じるものがある。住居にまつわる人の身体とその周りの空間の有り様に興味をそそられる。空や風雨から一つ隔たりをもった家の中という場所は誰しもにとって重要な場所である。安心の象徴であり、心身ともに弛暖する守るべき場所。

その場所にある生活用品のたたずまい、カーテンや布団、衣服にはアイロンで力をかけて整えられたものでないかぎり穏やかにしわがよっている。

その布は誰かの皮膚を守っていたもの、息づかいと温度を含んだものであり、常に人の気配を纏っている。
その物語に魅了されている。

2008 長谷川冬香

個展開催は1年ぶりとなる長谷川冬香。

「より細かく、より鮮明に捉えたい。対象の生々しさに迫りたい。」と語るように、描くモチーフの輪郭がより際立ち、明確になってきた。 昨年にひきつづき長谷川の興味の対象になっている「髪かざり」と題した文字通り髪の毛を描いたシリーズでは春夏秋冬をテーマにした新作が登場する。人から分離された髪の毛そのものに焦点をあて、あたかも命がやどっているかのように自由に動き回り己を飾りたてる。人体から離れてみて、それ自体が自我を持つというのは実に奇妙な話。しかし長谷川は抜け落ちた髪の毛の他者に与える生理的な感覚に着目し、またファッションとしての要素を持ち女性の象徴として挙げられる髪の毛それ自身が表現でき得る可能性を探る。 「部屋にしても髪にしても、その強烈なまでに人という気配を宿したモチーフを描いていたい。」

長谷川の描く、髪や布団、モチーフ全てから、光を纏っているかのような満ち満ちたエネルギーを感じとることができる。誰かが触れた「もの」はそれだけで特別な何かに変化をとげ、店頭で販売されている匿名のものから、名前を与えられたように固有のものとなる。 また、長谷川は今回初の試みとして、水彩に挑戦している。「夜に髪を乾かしたり、出かける前に靴下を履いたりする所作と同じような感覚で」描く。モチーフにこだわる長谷川が日々心に留めるもの、彼女の思考/嗜好がダイレクトに表現される。

※全文提供: YOKOI FINE ART

最終更新 2008年 12月 13日
 

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