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八木修平:Fast Vehicle
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 5月 07日

画像提供:児玉画廊 | 東京
Copyright © Shuhei Yagi and Kodama Gallery

八木は昨年 の初個展Kodama Gallery Project 24 八木修平「Drive」(児玉画廊|京都)降、年初のグループショー ignore your perspective11(児玉画廊|東京)、続くアートフェアG-Tokyo2011における断続的な新作の発表によってその存在感を示し、この度の個展を迎えることとなりました。

八木は具体的もしくはある単一のモチーフを念頭において制作しているのではなく、後述するようないくつもの抽象的なイメージを抱きつつ、色鮮やかな細いラインが縦横に走り、色が波打つような画面を構成しています。「Drive」における作品の説明に彼は、例えばバイクに乗ったときに風景が目前を流れていく疾走感などといったイメージを引き合いに出していました。

本展「Fast Vehicle」では、音楽を聴いているときの感動や、運転している時の乗物との心地良い一体感、ゲームにのめり込みすぎて陶然とするような感覚、輪郭がぼやけ灯りが浮かび上がる夜景の非現実感などのイメージがそれぞれの作品に混在しているのだと八木は述べています。そしてこれらに通底する「陶酔感」――すなわち心地良く酔いしれたような心持ちや快楽の境地といった感覚の鑑賞者との共有を志向しています。まず第一にそういった効果を狙うならば、確かに時間や空間の概念に揺さぶりをかけやすい音楽や映像その他のメディアに分があるのかもしれません。しかし八木はあえてペインティングによる表現の可能性を模索し、その中で鮮やかな色彩の層を幾重にもダイナミックに構成する手法を導きだしたのだと言えるでしょう。八木は主にアクリル絵具とマスキングテープを用いて、筆触や絵具の滴りといった痕跡そして鋭く造形的な断絶を持った色面を作りながら画面を構成していきます。マスキングテープによってアウトラインの形成と既に塗ってある面の保護を行い、混じり合わないよう塗り重ねた後にそれを剥がすという作業の繰り返しによって、ラインに沿って剥がされた部分は筆による描画ではなし得ない断絶を作り出します。濃淡や筆致を異にする幾層もの色面が明瞭な輪郭を持って折り重なり、独特のテクスチャが浮かび上がってくるのです。

先述の志向性や表現方法あるいは類似的なタイトルにおいて本展「Fast Vehicle」は前回個展「Drive」の延長線上にあるように思えますが、八木の意図は主観的 / 体験者的である「Drive」に対して客観的 / 傍観者的である「Fast Vehicle」すなわち高速で移動する乗物を傍から眺める立場というような相対する視座を示すことにあります。新たな視座を設け、つまりこれまで用いてきた手法で何が出来るのかを一歩退いて考え作り出した鮮やかで流動的な色彩の連なりは、また新たな様相で画面から溢れ出て見る者を覆い、類稀な体感をもたらすように思えてなりません。

※全文提供: 児玉画廊 | 東京


会期: 2011年5月10日(火)-2011年6月25日(土)
会場: 児玉画廊 | 東京
レセプション: 2011年5月21日(土)18:00 -

最終更新 2011年 5月 10日
 

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