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東北画は可能か?-方舟計画-
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 5月 07日

「東北画は可能か?」プロジェクトメンバーによる制作作品および過去の展覧会における展示風景より「東北八重山景」2010年|250*400cm|ユニット「yama no e」制作|撮影:藤原泰祐 | 画像提供:イムラアートギャラリー東京

「東北画は可能か?」プロジェクトは、三瀬夏之介(2009年〜東北芸術工科大学美術科日本画コース准教授)が同大学洋画コース講師の鴻崎正武とともに企画運営している、日本画・洋画・総合美術などの様々なコースの学生を交えたチュートリアル活動です。

その活動の一環として、これまでに「東北画は可能か?」と題した展覧会を東京(2010年4月)、宮城(2010年9月)、山形(2010年10月)、青森(2010年11月)にて開催してきました。

今回の「東北画は可能か?−方舟計画−」は、11月に気仙沼のリアス・アーク美術館での展示を予定されていましたが、この度の東北地方太平洋沖地震による中止を受け、急遽イムラアートギャラリー東京にて開催することにいたしました。

本展覧会では、今年の冬から取り組んでいた「方舟」をテーマとした学生たちの共同制作作品をメインに展示いたします。またプロジェクトに関係する宮城在住のアーティストたちの震災後の作品も並びます。

「いまここ」に住んでいる土地に向き合い、自身のリアリティと結実した表現の模索という本プロジェクトの作品を、より多くの方にご覧いただけましたら幸いに存じます。

「東北画は可能か?−方舟計画−」
一年前から私が勤務する東北芸術工科大学では「東北画は可能か?」というチュートリアル活動をスタートさせていました。この活動は、全国各地から縁あって山形に集まってきた学生たちと共に、ここ東北地域における美術のあり方をディスカッション、勉強会、講評会などを通して考え、作品制作をし、展覧会という形で巡業するというもので、すでに多くの作品が仕上がり、東京、山形、宮城、青森などでの展覧会を終えていました。

今年は夏に福島県の奥会津に滞在し、地域の方々との交流も含めながら「縄文」「方舟」というテーマでの共同制作を考えていました。また11月には気仙沼にあるリアスアーク美術館での展示も決まっていました。「今年の夏は忙しくなるぞ!」と学生たちと話していた矢先の3月11日14時46分、あの地震が起きたのでした。

4月になり、比較的被害の少なかった山形では物資やガソリンもようやく平常時に近い供給が行われるようになってきました。学生たちも避難所や被災地へボランティア活動に向かうもの、長期的な支援を考えるもの、そして制作を進めるものと動き出したものの、やはり続く余震、予断を許さない原発、そして劇的に変化するであろう未来への不安と緊張が隠せません。そしてそれは私も同じです。

そんな中、チュートリアルメンバーが集まり、共同制作「方舟」の制作が再開しました。地震前から多くの人が感じていた未来への閉塞感、何か大事なことを先延ばしにしているような感覚、価値基準の多様化と並立化、そんな中から次代に残すべきもの、感情、仕組みなどを「方舟」に託して描き上げようという思いは311以降ほんとうに切実なものとなりました。

これからアートの立ち位置も変化していくことでしょう。まずは被災者たち(日本のすべての人かもしれない)を癒す効果のあるもの、新たなるコミュニケーションを誘発させるような仕組みをもったもの。もうそれはこれまでのリレーショナルアートやデザインの域をはるかに超えていくのかもしれません。

でもけっしてそれだけではない。アートは刻み残された記憶でもあるのです。

絵とそして自分と対峙すること。孤独や無情を思い知ること。このどうしようもなく隠しきれない気持ちをしっかりとトレースし定着させて残していくこと。それもアートの大きな役割のひとつだと思います。

まだまだ被災地では多くの支援が必要な中、東北をモチーフとした多くの作品があり、これからも表現し続ける人が住んでいることを知ってもらうために今回の展覧会を開催することにしました。

「方舟計画」。希望も絶望も無常も不安も喜びも悲しみも全部のせて再び東北を巡業したいと願っています!
-東北芸術工科大学准教授 三瀬夏之介

全文提供: イムラアートギャラリー東京


会期: 2011年5月7日(土)-2011年5月21日(土)
会場: イムラアートギャラリー東京

最終更新 2011年 5月 07日
 

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