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横川ヨコ:ピクニック
編集部ノート
執筆: 田中 麻帆   
公開日: 2011年 4月 26日

画像提供:たけだ美術|Copyright © Yokoyokokawa

横川ヨコの描く「フシギ共和国」の子供たちはステーキやパンを頭に載せ、フォークを手に格闘し、お気に入りの洋服を身にまとってポーズする。

セルロイドの人形を思わせる顔立ちや、山やビル群のみを描く書割のような背景からは、私達の親世代が子供の頃に夢中になったであろう、昭和30‐40年代の特撮ヒーローや少年誌の雰囲気が想起される。ステーキ、食パンといった食べ物やよそいきの服装には、「舶来もの」に対する憧れと距離の名残りが、和製英語のような響きをもって感じられる。

日本が独自にハイブリッドしてきた文化は、現代では「カワイイ」ものとして世界でも逆輸入的に評価されている。横川の描く子供たちは、私達がこのような状況に対して抱く誇らしさや違和感をも、不協和音として鳴らしているように見える。

アクリル絵の具で描かれ、つるりと見えつつざらつきも感じさせる子供たちの肌の質感は、憧れとリアルの間で揺れ動く不思議な感覚を代弁する。子供たちはいったい何と戦っているのか、遊んでいるだけなのか、それとも傷ついているのか。

「フシギ共和国」の情景は一見、明快な答えを示していないが、作品を順々に見ていくうちに、私達がいま享受している文化やその由来に対する感情がひそかにくすぐられ、浮き彫りにされていくような心持ちがした。

最終更新 2015年 11月 02日
 

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