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わざゼミ2010報告展
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 4月 20日

今村遼佑《白色と雑音》2009年
Copyright © Ryosuke Imamura
画像提供:京都芸術センター

わざゼミについて
わざゼミは、何らかの創作活動を行う人を対象に、京都に息づく伝統工芸の技術や精神性を学ぶ機会を提供する事業です。染織をテーマにスタートし、2008 年度の募集からは木工・金工も加わりました。2010 年度は染織・木工・金工をテーマに参加者を募集し、審査を経て3 名が参加しました。

若い芸術家にとって伝統工芸の世界から学ぶべきことは多くあります。実習や見学を通し伝統工芸の「わざ」に触れた経験は、直接的にも間接的にも彼らの創作への刺激、糧となるでしょう。わざゼミは、これから活躍していく若い芸術家たちが伝統工芸の世界から何を学んでいくべきなのかを考える機会を提供します。

また、わざゼミ番外編として、初心者向けの集中ワークショップを開催しています。染織基礎講座「自分で染める 自分で織る」や「鹿の子絞りワークショップ」など、一線で活躍する染織作家や伝統工芸士の方を講師に迎え、工芸に親しみ、ほんものの「わざ」に触れる機会を提供します。

わざゼミ2010 報告展について
2010 年度のわざゼミ参加者3 名による活動を報告する報告展です。3 人はそれぞれ、染織、木工、金工をテーマに、1 年間をかけて様々な工房へ見学、実習に行きました。本年度は特に伝統工芸のわざを生かしつつ新しい表現を試みる伝統工芸作家の方々を中心にご協力いただきました。長い時間をかけて培われてきた技術は、もちろんこの短い期間で取得できるものではありませんが、感受性豊かな参加者は、「わざ」にまつわる様々なものを感じてきました。彼らが触れた伝統工芸の一端-使い込まれた道具、仕事に対する思い、鍛錬された技術は、若い彼らの眼にどのように映り、どのように作品づくりに生かされていくのでしょうか。

出品者プロフィール
天野萌/ Moe AMANO
1982 福岡生まれ
2004 九州産業大学芸術学部美術学科卒業

主な個展
2010 「かすみたつ やわらかい 雨」(ギャラリー16 /京都)
2010 「amano moe iro iro」(Halo Galo /京都)
2007 「invisible animals」(CAPHOUSE 山側ギャラリー/神戸)

主なグループ展
2009 「After School 放課後の展覧会」(元立誠小学校/京都)
2008 「通りと広場<トランジット>」(ギャラリーアートリエ/福岡)
2008 「棲むもの」PRAHA Project アーティスト・イン・レジデンス 札幌

一柳綾乃/ Ayano Ichiyanagi
1981 静岡生まれ 2003 静岡デザイン専門学校グラフィックデザイン科卒

主な個展 
2008 「絵綴り」(オルタナティブスペーススノドカフェ/静岡)
2009 「こ こ ろ 。 も よ う」(cafe& 古本ギャラリー 6 次元/東京)
2009 「あふれる」(cafe CAPU /静岡)

主なグループ展など
2008 作曲・編曲家渡会美穂との即興演奏× ライブペインティング
「tonalite」(オルタナティブスペーススノドカフェ/静岡)
2009 「おんさ」(SEWING GALLERY /枚方市 )
2010 「Landscape 」(cafe CAPU /静岡、カフェ+ 日杳/京都 )

今村遼佑/ Ryosuke Imamura
1982 京都生まれ
2007 京都市立芸術大学大学院修士課程彫刻専攻修了

主な個展
2010 第5回 shiseido art egg 今村遼佑展(資生堂ギャラリー/東京)
2010 「ながめるとみつめるのあいだ」(studio90/ 京都)
2009  「畔を廻る」(PANTLOON/ 大阪)

主なグループ展
2009 「It's a small world」(neutron Kyoto /京都)、「 FIX」(元立誠小学校/京都)
2008  「gadget 展」(京都芸術センター/京都)

※全文提供: 京都芸術センター


会期: 2011年5月3日(火・祝)-2011年5月13日(金)
会場: 京都芸術センター

最終更新 2011年 5月 03日
 

編集部ノート    執筆:平田 剛志


今村遼佑《白色と雑音》2009年
Copyright © Ryosuke Imamura
画像提供:京都芸術センター

    「わざゼミ」とは、京都芸術センターが次代を担うアーティストを対象に伝統工芸の見学や実習の機会を提供する長期講座である。2010年度は審査を経て天野萌、一柳綾乃、今村僚佑の3名の作家が参加した。今展では、それぞれが「わざゼミ」で経験したことをもとに、新たに制作した作品が展示される。
    天野は羊毛と木による立体作品『立っている生き物』、床の間にカラフルなアクリル板を人型にカットして重ね合わせた『床の間のAfter noon blink』を展示。1つは異なる素材の組み合わせ、他方は同じ素材の組み合わせで、ものとものが組み合わされる(アン)バランスの妙を楽しめる。
    一柳は染色による空間インスタレーション『つつまれて、抱きしめる。』と絵画を展示。温もりのある色彩が清々しい空気を放っている。
    今村は黒檀、胡桃、欅、桜などさまざまな木材を素材に制作した『アイスクリーム・スプーン』と金属でできた回転木馬が平積みされた本の上で回転する『本と回転木馬』を出品。異なる木材で制作されたアイスクリーム・スプーンはそれぞれの素材がもつ木目の色合いが美しい。普段は使い捨てにされるスプーンも、木が異なるだけで素材や技術が見えてくる。
    しかし、会場に並ぶ作品を見渡すと、鑑賞者が「伝統工芸」と聞いて想像するような技術は見えてこない。今展の3人の作品のどこに「わざ」があるのかと思われるかもしれない。だが、技術とはものや作品の背後にあるものだとすれば、彼らの手によって今後生れてくる作品は「伝統」の上に積み重ねられた「技術」だとは言えないだろうか。今展の3作家の「わざ」が磨かれていく今後を楽しみにしたい。


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