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美しき町
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 4月 19日

画像提供:むろまちアートコート

小さな領域「美しき町」

「美しき町」とは一九八七年に描かれた高野文子の短編漫画のタイトルです。今回の展覧会は、この物語の中で描かれる「美しき町」を個々の作品群によって表そうという試みです。ここでいう「町」とは、私達が生活する日常のいたって私的な領域のことを表します。

この物語の主人公である若い夫婦は、大きな工場が町の中心となっている小さな町に住んでいます。少し近所付き合いの苦手な二人が、近隣の人々や労働組合の活動に巻き込まれながらも、言葉少なに、淡々と暮らしを営む物語です。彼らは日曜日にゆっくりと散歩に出かけ、町のはずれの小高い丘に登り、自分たちが生活する小さな領域「美しき町」を見わたすのです。

物語の中の彼らは、嫌なことがあったとしても不満を言わず、自ら何かを主張することもありません。「町」での暮らしを受け入れ、つつましいながらもより良い暮らしにするため、自分達の「町」を「美しき町」に変えるための選択をそのつどします。

一方、私達は自らが生活する「町」をきちんと見つめることが出来ているのでしょうか。いま私達に必要なのは、どのような「町」であれ、その状況を受け入れ、自分の社会的立場や思想を肯定してみることではないでしょうか。

私達は、物語の夫婦のように日常の営みや現実に向き合い、私達のよりどころとする生活の領域「町」から、芸術活動の実践の立脚地としての「美しき町」を見つめてみたいと思うのです。

「町」は人々が過ごしている日常の数だけ存在します。しかしながら私的な日常が全く公共性を欠きほかの「町」と関係していないわけではなく、お互いが作用しあい、かかわり合いながら「町」はつくられていくのです。それぞれの日常が生み出した「町」が緩やかにつながりあっていく様子から、あなた自身の「美しき町」の存在にも目を向けて頂ければ幸いです。

出展作家
佐野えりか・佐藤健博・梶田雄一朗・岡田源太・榎木友香・泉洋平

※全文提供: むろまちアートコート


会期: 2011年4月19日(火)-2011年4月24日(日)
会場: むろまちアートコート

最終更新 2011年 4月 19日
 

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