高円寺・原発やめろデモ!!!!!! |
レビュー |
執筆: 田中 みずき |
公開日: 2011年 5月 06日 |
2011年4月10日、東京都杉並区の高円寺で「高円寺・原発やめろデモ!!!!!!」が開催された。東日本大震災によって起きた福島第一原発での事故に対し、反原発を唱えるデモである。14時から高円寺中央公園(駅南口徒歩1分)に集合し、15時からデモ行進で新高円寺駅、東高円寺駅を通過し高円寺駅北口で19時頃に解散という内容で、当日、現場には数千人以上の参加者が集った。※1 近年国内で開かれたデモとしては記録的な参加人数であったが、統一地方選挙投票日と重なったせいか、国内のTVや新聞等大手メディアでの報道は民放TV局1社のニュース放送に留まり、インターネット上にてデモの姿が伝えられることとなった。※2 大手マスメディアでの報道が無いため、この活動を知らない人々も多いかもしれない。しかし、インターネット上の口コミや動画サイトで今回のデモが伝えられたことは、ネットに親しむ若い世代にとって、同時期に今起きていることを知り、自分にとっても切実な問題として捉える結果も生んだのではないだろうか。参加者たちは個々に携帯電話で写真や動画を撮り、リアルタイムでTwitter※3 に書き込んだりしていた。現在、大手検索エンジンGoogleで「高円寺 デモ」と検索をかけると、約 386,000 件のサイトがヒットする状況となっている。※4 今回のデモ主催者は、高円寺でリサイクルショップ兼イベントスペース「素人の乱」を開いている松本哉氏だ。原発反対運動が高円寺で開かれたのは、拠点地が高円寺のためだろう。松本氏はこれまでにもデモを主催し、「放置自転車撤去反対!!おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろ一揆」等を開催してきた。一見すると、極個人的な思いがデモになっているように思え、身勝手な冗談なのではないかと笑ってしまう名前のデモである。しかし、そこには街頭が誰のものかという問いや、物品売買の利権への思考、若い世代の労働環境悪化や収入低下等、現代を生きる人々に多く共有される問題が潜んでいる。 なお、「素人の乱」は共同経営者の山下陽光氏がアートパフォーマンス集団「トリオフォー」名義で活動を行っていたり、店舗での作品展覧会等も開催したりしている現代美術活動の舞台にもなっている空間だ。今回のデモでは、街の市民が表現者になる場が提供されていたとも見えるだろう。「反原発」という意見に同意する参加者たちを見ると、政治活動に従事してきた人物というよりは、カジュアルな格好で参加している若者たちや、小さい子供たちをつれた若い夫婦、楽器を持ったバンドマン※5 、ピエロ風の仮装をした一団やチンドン屋が集っていた。また、DJブースやステージを載せたトラックや楽器を手にした人々が集り、常に音楽とともに動いていく。反原発のメッセージを込めたラップに合わせて参加者も合いの手を入れていく様子が終始見られた。参加者が手にしている自作のプラカードには、「反原発」はもちろん、震災後に企業CMが自粛された際に度々放送されたACジャパンのCM「あいさつの魔法」をモチーフにした「原発さよなライオン」、自分たちの世代だけではなく未来の子供たちを考えて書かれた「子供たちに未来を」など、思い思いのフレーズが書かれていた。 そこに集っているのは、家の中ではなく、街に出て自分の意思を表現する市民である。同時に、何も持たず、普段着で来ている多くの人も、そこで共に歩くだけで表現者となる状況が生まれていた。日本では、他国に比べてデモが行われることも少なく、参加者も少ない場合が多い。様々な運動があった60年代は過去のものとなり、近年では海外から見たら異常と思える程に寡黙であったと言えるだろう。しかし、今回、自分の意見を伝えることの必要性が重視され、それが大規模な人数で実行されたことは画期的なことだろう。※6 政治の指導者が、その現実に気付かない程老いていないことを願う。 脚注 ※1 主催者からのコメントでは15,000人。現場で見た際には、当日15時頃には集合場所の高円寺中央公園が満員となり、周りの道に参加者が広がっている状況であった。インターネット上では参加者に関して1500~18000人等様々な意見が飛び交っている。筆者が見た様子では、出発当初は数千人だったが次第に増えていったようだった。 ※2 海外では、BBC放送、ロイター通信などが報道していた。 ※3 Twitter(ツイッター)は、 ユーザーが「ツイート」 (tweet) と称される140字以内の短文を投稿・閲覧できるコミュニケーション・サービス。2006年7月にObvious社(現Twitter社)が開始した。 ※4 2011年4月11日16時現在 ※5 公式情報によると、The Happening、パンクロッカー労働組合、フジロッ久(仮)、どついたるねん、pinprick punishment、PPP、ジンタらムータ、大熊ワタル(cl/シカラムータ)、こぐれみわぞう(チンドン太鼓/シカラムータ)、河村博司(g/ex:ソウルフラワーユニオン)、JIGEN(b/桃梨、ソウルフラワーユニオン、頭脳警察)、関島岳郎(tuba)、ギデオン・ジュークス(tuba/シカラムータ、渋さ知らズ)、関根真理(per/渋さ知らズ)、多田葉子(sax/こまっちゃクレズマetc.)、吉野繁(sax)など、多数のミュージシャンたちが参加していた。 ※6 4月10日、高円寺以外でも日本各地でデモが行われた。 参照イベント 2011年4月10日東京都杉並区・高円寺で開催、「高円寺・原発やめろデモ!!!!!!」 |
最終更新 2015年 10月 21日 |