| EN |

前田さつき 展:徴 sirusi
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2008年 10月 30日

前田さつき《刻印》(2008年)ボールペン、色鉛筆、パネル 112.0×145.5cm copy right(c) 2008 YOKOI FINE ART

ボールペンを使い、緻密で繊細な世界を描く前田さつき。個展開催は実に3年ぶりとなる今展では日本の入墨をテーマに、内と外から浸食されるような感覚をもつ作品10余点を発表する。 「私が描く入墨は、心情や体験等が内から浮き出たものと、外部からうけたもの、と両方あると思います。描いているときは、受け身の私個人の感覚と紙面上の女の子の感覚、私個人が紙面上の女の子の体を彫っている感覚と紙面上の彫り師の男の感覚とが同時に沸き出しているみたいです。」 当初、谷崎潤一郎の「刺青」にインスピレーションをうけて制作を開始したが、前田自身の心の闇、葛藤を作品に昇華し、描く少女はどれも前田自身が反映されている。 「刻印」とは決して逃れることの出来ない「記憶・経験」に拘束されている印。抵抗する術もなく、大きな力に飲み込まれていく少女の姿。やがて状況をさとり己自身を目覚めさせていく兆しがみえる。一個人の人格が変わるほどの変化は、思春期における成長と似ている。前田の描く人物は人間的である。エゴイズムで純粋で血の通った人間の悲痛が伝わってくるようである。 また、今回前田は、「記憶・経験」の中でも特に性的なものに焦点をあてて、制作に挑んでいる。誘惑やあらがえないもの、「彫り師の男」という他者の介在。内面と外部から浸食され、破滅に向かっていくような危うさをこのテーマで見事に表現している。 近年、国内外問わず発表の場を広げている前田。当初は、無名であるにもかかわらず、ボールペンを使用した技法の精密性と深い精神性を感じさせる世界観が高い評価を受けた。技術の進歩とともに、さらに内面を掘り下げたテーマで展開される、大きな転換期となる今展にご期待ください。
※全文提供: YOKOI FINE ART

最終更新 2008年 11月 01日
 

関連情報


| EN |