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山口和也:プロボクサー小松則幸
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 4月 04日

Copyright© Kazuya Yamashita
画像提供:山口和也

私は2003 年2 月より大阪府寝屋川市出身のプロボクサー小松則幸さんの撮影をはじめました。小松さんは、第29 代ならびに第34 代OPBF 東洋太平洋フライ級王者であり、元WBC 世界フライ級2 位という肩書きを持ち、後楽園ホールで内藤大助と史上初の東洋太平洋、日本フライ級ダブルタイトルマッチを行うなど、世間の注目を集める亀田兄弟や内藤大助と肩を並べるフライ級を代表するボクサーの一人でした。

しかし2009 年5 月13 日に亀田大毅との試合を控えたそのちょうど1ヶ月前の4 月13 日、滋賀県の滝壺で精神修行中に小松さんは亡くなってしまいました。その葬儀にはファンや関係者ら1000 人以上が参列し、親交のあった長谷川穂積や名城信男、そして辰吉丈一郎、徳山昌守、井岡弘樹など現・元世界王者らもそろって参列しました。私は写真家であり、様々なコミュニケーションによって生まれる作品をつくる美術家としても活動しているのですが、小松さんの撮りはじめたのも、依頼された撮影の仕事ではなく、山口和也自身の創作活動としてでした。

2002 年に初めて生でボクシングの試合(辰吉丈一郎 vs セーン・ソー・プルンチット)を観戦した時、リング上の2 人が交わしているパンチだけでない様々なコミュニケーションが眩しい光のように感じられ、それを美しいと感じたのがボクシングに強く惹かれた最初の瞬間だったのですが、それからしばらくして小松さんに出会ってからは、彼の試合にすべて足を運び、控え室やプライベートショットなど様々な表情を飽きる事なく6年間、撮影してきました。

りわけ試合の前日に初めて顔を合わす対戦相手との間にある空気は魅力的で、ポンサクレック選手との世界タイトルマッチや内藤大助選手とのダブルタイトルマッチなどは、空間がびっしりと音のない対話で埋め尽くされているようでヒリヒリしました。

私はそのように小松則幸が交わす、様々な他者とのやり取りに魅力を感じて撮影をしてきました。対戦相手だけでなく、ファンやジムの関係者、または自然や彼にとっての神様のような存在と、、、それら他者とのコミュニケーションをとても大切にしているのだという事が、その時々に見せる彼の表情から感じ取れました。小松則幸とそれら他者との間にある目に見えないナニカ。僕はそれを被写体として、撮影を続けていたのだと思います。

「いつか世界獲ったら写真集出そな」と話していたのですが、今となってはそれはかないません。けれども生前多くの人に愛された彼の魅力を、そして僕が感じた眩い瞬間を、記録した写真達から感じていただけるのであればと思い、東京と大阪での写真展開催を企画しました。

一周忌にあたる2010 年4月、東京展として株式会社エプソンのギャラリーエプサイトで写真展「プロボクサー小松則幸」( 会期:2010 年4月9 日~22 日)を開催する事が出来ました。そして三回忌にあたる2011 年4月、梅田のHEPHALL にて 、山口和也 写真展「 プロボクサー小松則幸 」を開催いたします。

山口和也
兵庫県高砂市出身 京都造形芸術大学 美術工芸学科 洋画コース卒業 美術家、写真家。絵画作品などを国内外で発表する他、様々な人と1対1で画用紙にお互いを描き合い、出来上がった絵を交換する「描き合いっこ」など街や人とのコミュニケーションに関する活動を多く行う。その描き合いっこのお相手にミュージシャンを迎えてステージ上でミュージシャンは楽器(音)を、山口は画材(落書き)を道具として1対1で行われるライブペインティング「描き合いっこ『音と落書き』」で描かれた作品で2000 年、絵画の全国公募展 関口芸術基金賞(TAMON 賞)大賞を受賞し、副賞としてニューヨークに滞在。その間に出会った日本画家千住博を三年間撮影、写真集を刊行する。これを機に人物を長期間撮影する記録写真家としても始動。近年はプロボクサーを主な被写体とし、2003 年より小松則幸を、2008 年からは辰吉丈一郎の記録撮影を行っている。

主な個展
2000 山口和也の部屋 (西脇市岡之山美術館/兵庫)
2003 山口和也の部屋 (アートスペース虹/京都)
2006 山口和也の部屋 (ギャラリー覚/東京)
2007 山口和也 - TRACES - (ギャラリー覚/東京)
2008 山口和也 - TRACES - (アートスペース虹/京都)
2010 山口和也 写真展「プロボクサー小松則幸」 (エプサイト/東京)

主なグループ展
1998 フラッグアート展’ 98 (岐阜市内各所/岐阜)、JACA’ 98 日本ビジュアルアート展、(フジタバンテミュージアム/東京、アジア・オセアニア研究センター/キューバ)
1999 国民文化祭’ 99 閉会式会場オブジェ制作 (長良川国際会議場/岐阜)
2000 フィリップモリスアートワード (恵比寿ガーデンプレイス/東京)、関口芸術基金賞展 (柏市文化フォーラム/千葉)
2001 ”Galaxy 128 ” (ギャラリー128 /ニューヨーク)
”Nature ” (ブルックリンアートセンター/ニューヨーク)、ニューヨーク韓国大使館設立記念展 (韓国大使館文化センター/ワシントン)
2004 混沌から躍り出る星たち (スパイラルガーデン/東京)
2007 ART Shanghai 2007 ( 上海世貿商城/上海)
2009 After School 放課後の展覧会 (元 立誠小学校/京都)

受賞歴
1998 フラッグアート展’ 98 日比野克彦賞、JACA’ 98 日本ビジュアルアート展 特別賞
2000 関口芸術基金賞展 大賞
2008 高砂市文化奨励賞

※全文提供: 山口和也


会期: 2011年4月6日(水)-2011年4月13日(水)
会場: HEP HALL

最終更新 2011年 4月 06日
 

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