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根本寛子:木こりの残した一本の木
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 3月 16日

《何処かにある広い場所》2010年
72.7 x 72.7cm|パネルに綿布、油彩
画像提供:メグミオギタギャラリー
Copyright © Hiroko Nemoto

1981年生まれの根本寛子は武蔵野美術大学、東京藝術大学美術学部絵画科を経て、2008年に東京藝術大学大学院美術研究科で修士課程を修了いたしました。2010年5月にShowcaseで行われた個展では、存在するかわからない『Battement de cil (まばたきの音)』も聴きたいと願う事でいつか音となるような世界を表現し、今展では見たいと願う事で初めてその世界が形作られるという想いを込めて描きました。それは大量生産されるイメージを受動的に眺める私達へ、「見る」事は「想う」事であるという問題提起でもあります。

今展では現実でも曖昧な領域の氷や鏡と身の回りの物との組み合わせで、絵の内側に潜む想像の世界の入り口を描きます。私達はそれらの作品に引き込まれ、まだ見ぬ風景に降り立ち、見知らぬ存在と空間を共有するような不思議な身体感覚を覚えます。

私たちの住む世界では、様々なドラマや時間が入り混じっています。私が絵を描いている時、アラスカの雪の下では熊が夢を見ながら眠っていて、電車で移動をしている時、どこかの小さな教会では少女が神を信じている。私ではない誰かが、ここではない何処かで今を過ごし世の一部になっている。きっと、ここから遠く離れた森の中では、木こりの残した一本の木が静かに呼吸をしているだろう。体感することはないけれど、存在自体を抱ける空間。そんな背後の広がりに、私は恋をしながら生きています。

私達の生きる世界は幾つもの時間軸と空間が同時に存在する四次元的なもので、その姿はフラットな発光体である電子化されたイメージでは表現できません。この世界の真のリアリティは私達の五感と想像力によって実現され、絵画はその入り口である事を根本の作品は語っています。

描きながらキャンバスの奥に広がる世界を旅する根本の自由な心は、自分が見たかった風景、感じたかった温度を丁寧な筆致にのせて再現していきます。それは天地創造という創作の原点ともいうべき純粋な希望に溢れた世界です。根本寛子「木こりの残した一本の木」にどうぞご期待下さい。

※全文提供: メグミオギタギャラリー


会期: 2011年5月10日(火)-2011年5月28日(土)
会場: メグミオギタギャラリー内、PROJECT ROOM

最終更新 2011年 5月 10日
 

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