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柏原由佳:真ん中へ
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 2月 25日

画像提供:小山登美夫ギャラリー
Copyright© Yuka Kashihara

作品紹介
柏原由佳は、実在する景色と内的な想像の空間が、まるでとても目の細かい織物のように紡ぎ上げられた風景画を制作しています。その背景には、日本の大学を卒業後、ドイツで進学し制作を続けている柏原の、「距離」というものへの興味があります。ドイツと日本の物理的な距離、人やそれぞれの文化との精神的な距離、また日本人として、ドイツ人としての自分同士の距離。これらを経験しながら、ドイツと日本の行き来を続けること。それは慣れ親しんだ場所への郷愁とその異化など、制作につながる視点の変化をもたらしたのち、次第に柏原に自分自身と深く向き合わせ、「山」「穴」「湖」といった、内省的な思索をシンボリックに示すようなモチーフとして表現されるようになりました。 柏原のペインティングは、油彩で何度も薄い層を重ねて描かれることにより、これらのモチーフを豊かにする独特の雰囲気と色の響き合いを与えられています。これは学部時代に学んだ日本画の技術を、油画の技術と織り交ぜて制作することによって可能になっています。ドイツで伝統的なヨーロッパの絵画技法を学んだ柏原は、単に異なる伝統の融合を試みるのではなく、既存の分類を批判的にとらえたうえで、彼女自身の絵画、また彼女がいう「自分の個人の歴史」の表現に真摯に取り組んでいます。

展覧会について
本展では、上述した「山」「穴」「湖」がキーワードとなる新作ペインティング、約10点を展示いたします。これらの作品の制作の中心となるものについて、柏原は以下のように話します。
自分自身を知るために、「穴を掘る」というような作業が続いてきました。外にあるものと中にあるもの。その境界線はどこにあるのか。自分が内側空間にいるのか外側空間にいるのか、内側だと思っていた場所は実は外側で、また外だと思っていた場所が実は内なのかもしれない。またそこはこれから入っていく入り口なのか、それとも自分が出てきた出口なのか。
このような柏原の問いは、見る度に様々なイメージや記憶を呼び起こすような彼女の作品を通して、鑑賞者にも委ねられているといえるでしょう。本展は、これらのペインティングが日本において初めて展示される個展となります。是非ご高覧下さい。

作家プロフィール
柏原由佳は1980年、広島県生まれ。2006年、武蔵野美術大学造形学部日本画学科を卒業。2006年に渡独し、2007年にライプツィヒ視覚芸術アカデミー(ドイツ)に入学。現在も同大学専門課程に在籍しています。
2008年バウハウス・デッサウにて、同財団研究員Torsten Blumeによるキュレーションの個展「借景」展を開催。また2007年と2008年、Galerie Burgstrasse(ドイツ)にてアーティストMoritz Goetzeが企画するグループ展に参加しました。小山登美夫ギャラリーでは初の個展となります

※全文提供: 小山登美夫ギャラリー


会期: 2011年3月5日(土)-2011年4月9日(土)
会場: 小山登美夫ギャラリー東京 6F
オープニングレセプション: 2011年3月5日(土)18:00 − 20:00

最終更新 2011年 3月 05日
 

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