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関口正浩:反転・回転・反復
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 2月 16日

画像提供:児玉画廊

関口の作品は、油絵具を樹脂板に塗り伸ばして膜状に乾燥させ、それをキャンバスに貼り付けることによって絵画として提示されます。これはいかに描写や塗りの技術に左右されないで描くか、その方法を研究する過程において、例えば切り絵がそうであるように、むしろ絵筆を使わずに絵画を制作するならば、という着想に基づいた手法です。

「空中に楼閣を建てることが徒労や絵空事でなくなる時代」即ち人類が宇宙に城を建てられるようになる時のことを考えねばならない、と関口は表現しますが、仮に無重力空間において絵画を制作するとした場合、もはやキャンバスや支持体を必要としないのではないか、つまり、イメージを上下左右といった方向の概念、パネルやキャンバスという平面から解放し自立させる可能性についても言及しています。

現在のキャンバスに膜を貼るという行為そのものは「チューブから出した絵具をそのまま空中で加工出来るようになるまでの、さしあたっての訓練である」という自らの手法について評した言葉は、関口の独特な絵画に対する態度を示唆しています。これまで「うまく見えない」(2009年)、「平面B」(2010年)と2度の個展を通じて、単純な膜の面の重ね合わせによる構成から複雑な形状の断片の組み合わせによる構成へと変遷し、そして今回は膜を「反転」あるいは「回転」させたりして構成していくプロセス、そしてその構成を「反復」し、相似形として示す等、表現は一段と「絵画的」な自由度を増したと言えます。また、薄い膜、という性質上、過程で皺や裂け目が生じるのは不可避ですが、今回は膜を意識して厚く作る事で皺を拡げ延 ばし、より平坦かつ均質な色面に仕上げることが可能になり、従来の薄い膜との使い分けによって、色面がより強い対比を成しています。

今回発表される新作では、膜の質とその扱い方が、テクニックとしてさらに向上した事に裏付けられ、もともと特徴的であった表面の緩急が作り出す緊張感、まるでビニール素材のようなフラットな質感、そして何よりも色彩が厚みを持った物質として扱われている事を視覚的に意識させる重層性、それらの要素がより明確なものとなっています。例えば、相似する2点組の作品では、層の重なりの上下関係の組み合わせを変えるなど、その比較において、表面的な図像の上だけではなく意味的にも鏡像あるいは対称を成していると言えます。

原点回帰とは言わないまでも、そして関口自身未だその過程にあるとはいえ、敢えて今、100年越しでモダニスムを敷衍するかのような方法で、絵画について根源的に再認識しようとする関口の試みは非常に重要な意義を持つように思えてなりません。

※全文提供: 児玉画廊


会期: 2011年2月19日(土)-2011年3月26日(土)
会場: 児玉画廊|東京
オープニング・レセプション: 2011年2月19日(土)18:00 -

最終更新 2011年 2月 19日
 

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