河井美咲:えんぴつ体操 |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2011年 2月 04日 |
schtucco / editionnordより発売される初の新作ドローイング集「えんびつ体操」の出版を記念しての、河井美咲(1978年、大阪生まれ)による個展。 河井美咲はポップカルチャーや中古品店、作家自身のコミュニティーからうまれたエキセントリックな登場人物を模写した絵画、彫刻やインスタレーションをおりまぜたミックスメディアアートの作家として知られています。作家にとって、絵を描くことは他のメディアを活用しての彼女の総体的な試みに不可欠な要素となっております。ここ数年、schtucco /editionnord社による新作ドローイング集の出版に向けて、河井は毎日1点以上の絵を描き続けてきました。本個展では、新作ドローイング集より抜粋された120点のドローイングや複数の色鉛筆でギャラリー内の壁を取り囲むように捕かれた壁画、アニメーションを活用した新しいマルチメディアの彫刻作品をつかつてのインスタレーションが施されます。 絵説やレリーフ、彫刻をつかって開催された東京オペラシティーアートギャラリーでの個展プロジェクトに次いで、今展はTake Ninagawaでの3度目の個展となります。今年の9月10日から11月6日まで、スウェーデンの美術館MalmoKonsthallて彼女の個展が聞かれる予定となっております。同時期、スウェーデンのマルメ市にありますギャラリーGalleri Loyalでも個展が開催されます。 河井美咲 ※全文提供: Take Ninagawa 会期: 2011年2月5日(土)-2011年3月12日(土) |
最終更新 2011年 2月 05日 |
展覧会タイトルに騙されてはいけない。「えんぴつ」と書かれていたので、鉛筆で描かれたドローイングかと思っていたら、画材は鉛筆ではなかった。ぜひ、現場で確かめて欲しい。鉛筆よりも濃淡もニュアンスも削ぎ落とされた画材が使われている。一筆書きのような単純な線で描かれているものたちは、小学生男子がノートに描いた落書きのような絵。壁にひしめく120枚の作品群は、猥雑で、脱力感に溢れ、小憎い。
しかし、小学生男子と違うのは、そこにノスタルジックで普遍的な要素を見出し、作品に昇華している点だろう。画廊中央、オブジェに投影されたアニメーションでは、いつか誰かがノートの片隅に書いたような絵が生き生きと動き回る。自分がかつて描いた落書きも、閉じてしまったノートの中でこんな風に動いていたのではないかと錯覚させられてしまうだろう。
展覧会タイトルの答えは、画廊をぐるりと囲む壁にある。最近使わなくなっていた鉛筆をまた握りたくなった。