| EN |

北浦凡子:花のこと
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 1月 26日

Series - Domestic Stills 'Stitched', 420 x 308 mm, lambda print, 2004
画像提供:東京画廊+BTAP|東京
Copyright© 2004 Namiko Kitaura

北浦凡子は1977 年東京生まれ。イタリアのFABRICA(ベネトン出資のアーティストレジデンス)を経て、フリーランスの写真家として日本、イタリア、イギリス、フランスを拠点に活動を続けています。作家として初の個展となる本展では、近年撮影された花の静物写真、Domestic stills を発表いたします。

被写体の花には手が加えられ、その痕跡が残されています。花弁に糸を通して吊るしたもの、油で揚げたもの、洗剤に浸したもの、原型が崩れるまで洗い続けたものなど、その状態はさまざまです。表面の微細な皺さえも写し出す距離から、張力で引きちぎられるような危うさや、変質した花の姿を北浦は捉えます。被写体は肉体的な感覚を伴い、画面全体に不穏な空気が漂います。

美しさ、可憐さ、官能の象徴である花は、日常的に多くの人に撮られています。人々は美しさを永遠化するために、映像を印画紙に焼き付けるのです。しかし北浦の場合、写すのは花そのものではありません。その眼差しは花の上に起る「出来事」へと向けられます。象徴性の高い被写体の上で、出来事の意味が鑑賞者の想像力によって多重に掻き立てられるのです。

世界が変転を続け、さまざまな出来事が現れては消えて行く中で、北浦の写真は花という「もの」を通してうつろう「こと」を強く喚起する展示となるでしょう。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。

静物を用いた写真表現による、女性的感情の探求
この作品が探ろうとしているのは、目には見えない感情を視覚化するために必要な、ある種の比喩 的且つ精緻な方法である。これらのイメージは、はかないものの美や安楽、力強さ、そして生におけ る曖昧さと心地よい憂鬱を経験する機会を鑑賞者に与える。愛や憎しみ、落胆や幸福、強迫観念や 情熱、そして悲嘆といった感情は、肉体的な水準では知覚することができず、ほとんど不可視なもの である。しかし、感情は我々の現実に作用し、我々の肉体をコントロールしている。それはコミュニケ ーションの基礎を作る要素なのである。これらのイメージはまたそういった感情と女性性との関係を 探り当てようとする。男性が支配する構造の中で、女であることが何を意味するのかを探るのである。 この過程を通じて、転覆と抑圧、順致の女性的経験を取り巻く複雑な感情に、声が与えられるので ある。
(北浦凡子)

北浦凡子(きたうら・なみこ)
1977 年東京生まれ。1996 年に絵画を学ぶため渡英し、その後渡伊。1997 年写真に転向し作品制作を スタート、写真家として活動を続ける傍らミラノで視覚芸術・デザイン・美術史を、ロンドンでモダンアート を学ぶ。2003 年から2005 年までベネトンが出資するアーティスト・レジデンス「FABRICA」にて、日本人 の写真家として初めてスポンサーを受ける。

【展覧会】
2008 “Out of Body” Open Eye Gallery、リバプール、イギリス
2006 “Tokyo Photo View” (後援:ポラロイド)六本木ヒルズ、東京
2005 “Untitled” via Ventura ex-Faema, ミラノ、イタリア
2004 個展“Recuperation” ロンドン

【受賞】
2005 Photo España
2005 Descubrimientos 最優秀ポートフォリオ受賞
2004 国際コンペティション名古屋デザインDO!銀賞受賞

※全文提供: 東京画廊+BTAP|東京


会期: 2011年2月26日(土)-2011年3月19日(土)
会場: 東京画廊+BTAP|東京
アーティスト・トーク: 2011年2月26日(土)13:00 -
オープニング・レセプション: 2011年2月26日(土)15:00 - 17:00 東京画廊+BTAP|東京にて

最終更新 2011年 2月 26日
 

関連情報


| EN |