現在を生きる私たちの日常は、めまぐるしい変化と膨大な情報によって構成されているといっても言い過ぎではありません。特に、都市で生きる人間にとっては避けては通れないことです。身の回りには、あらゆるものがあり、最低限のものはリーズナブルな値段で手に入れることができる。あらゆるインフラが整備され、あらゆるシステムが構築されている。私たちは、あまりの便利さに慣れ、それがいつしか息苦しさに変わることもあるでしょう。そんなとき、私たちは、田舎の町へ出かけてみるなど、脱日常を試みるのでしょうか。

しかし、このような情報過多の慌ただしい日常を、肯定的に自然体で受け入れ、この状況を前提として生きているということもある意味事実です。

今回の展示で試みるのは、あらゆる日常をひきよせ、再構築し、さまざまな日常をつくる2組の作家による展示です。 立体、平面作品を制作する杉浦 藍は、1982年生まれ。生まれたときから多くのものに囲まれ暮らしてきたことで、そこで感じる消費のスピードに注目し、身の回りのあらゆるモチーフ、素材をサンプリングして、一つのかたちの存在を試みている作家です。その対象は無限で、それらを取捨選択し、それらの意味性を消し、新しいものとして命をふきこみます。表面的なもの、素材感を感じさせるものが多く、そのかたちの、周辺も含めて表現を試みているようです。 同じく、もう一組のSTOMACHACHE.は、1984年生まれのミヤザキノブエ、1986年生まれのミヤザキトモエの姉妹によるユニットです。特にむずかしいことも考えずに落書きを描いてZineを制作しているという二人ですが、制作物をいろんな人にみてもらい、友達になれたら良いと、積極的にコミュニケーションをはかろうと制作活動を続けています。どんどん消費されていく身の回りのモチーフが中心ですが、アルファベットなどの文字、山などの自然のモチーフも取り上げています。

アメリカナイズされた世代の二周り下の世代、東海岸も西海岸もおなじ領域ととらえ、あらゆる情報を洗練された感性で取捨選択し、組み上げて行く中から見える作家それぞれの思考と手技の世界をプレゼンテーションしたいと考えています。

杉浦 藍　Ai Sugiura
1982　愛知県生まれ
2005　武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業
2007　同大学大学院修士課程修了

個展
2010 「Electric mouse」新宿眼科画廊、東京
2009 「The Seven Dwarfs」ギャラリー現、東京
2009 「宝探しごっこ」ギャラリー現、東京
2008 「ペンシルロケット」藍画廊、東京
2007 「パイナップルリリー」ギャラリー現、東京

グループ展
2010 「ULTRA003」スパイラル、東京
2010 「ARTJAM TOKYO 2010」ArtJam Contemporary、東京
2008　＜画廊企画＞「京橋3-3-8」 藍画廊、東京
2008　Stump Autumn Event「THE NEXT」Gallery Stump Kamakura、神奈川
2008 「新世代への視点’08 小品展」ギャラリーなつか、東京
2007　「武蔵野美術大学修了制作展」武蔵野美術大学、東京
2006 「棲息の密度」 武蔵野美術大学、東京
2005　「武蔵野美術大学卒業制作展」武蔵野美術大学、東京

受賞
2011 「アーツチャレンジ2011」入選
2010 「前橋アートコンペライブ2010」銅賞
2009 「Amuse Art Jam 2009 in Kyoto」岩渕貞哉賞（京都文化博物館／京都）
2006 「JEANS FACTORY ART AWARD」優秀賞（高知市文化プラザかるぽーと／高知）
2005　武蔵野美術大学卒業制作展優秀賞

STOMACHACHE.
ミヤザキノブエ（1984年生まれ）と、ミヤザキトモエ（1986年生まれ）の2人組。独学で家を建てた父親のDIY精神を受け継ぎ、高校時代よりZineを作りはじめる。レコードショップへの万置き、アーティストとのZineの交換・コラボレーション、Tシャツの制作、英和辞書を読みあさり今に至る。雑誌へのイラスト寄稿やバンドTシャツのデザイン・PV制作・ウエブサイトのデザインなどをしている。2010 年11月、「ULTRA003」に出品。

※全文提供：　fabre8710

会期：　2011年1月18日（火）－2011年2月12日（土）
会場：　fabre8710