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銅金裕司・中村恭子:シルトの岸辺
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 11月 29日

(左)中村恭子《百刻みの刑-ドゥルーズの時間の第三の総合》部分
2010年|紙本彩色,三枚組絵|180×90cm
(右)銅金裕司《動く絵:Hagenomyia pictorica》
画像提供:ASK? art space kimura

ダーウィンは『英国産および外国産ラン類の昆虫による受粉』(1862年)で、ランが昆虫によって受粉される仕組みを検討し、アングレーカム属の異様に長い距(スパー)に対応する長さの口吻をもつ昆虫がいるはずだと示唆した。するとアーガイル公はそれに噛みつき、そんなことが自然に起こる可能性はなく、そこに創造主の知恵を見るべきだと主張したという。この創造主というランと昆虫の境界、あるいは岸辺の周辺について。そこで、我々は、我々の作品そのものの中に創造主さえ投げ込むことにしたのだ。すると、どうだろう、その境界はみごとに振動しはじめ、優雅な生きたドローイングが描かれだし、離散して、百刻みの刑になった。
-中村恭子・銅金裕司

銅金裕司 展
毎日、皿に描かれる絵が変わる。
朝、起きてみて見ると、その絵が◎(二重丸)とかだとその日、いい予感がするものだ。
このように、その日その日の環境で変わってゆく。
皿には日本画で使われる岩絵具とアリジゴク(Hagenomyia)を入れている。
アリジゴクはせっせと毎日、絵を描いてくれ、あなたのいないときにも素晴らしい絵を描く。
絵具の粒子、器の形状などを構成して、臼を作るより、図案を描くように誘導する。
アリジゴクはウスバカゲロウの幼虫で、生まれて3年 くらいで成虫になり、10日ほどで死ぬ。
この造形にあなたがかかわることはアリだが、基本的にアリジゴクは「完璧な造形としての臼(ウス)」の制作者だ。
その造形は有無を言わせぬ完璧なデザインだ。なぜなら、彼らのデザインにおいて、浅いとアリは逃げ出すし、深いと砂が落ちてくるからだ。 いかなる状況においても、完璧な造形を作り出そうと日々試みている姿はかけがえなく、いとおしい。
人間が、自然へのかかわりにおいて、このように完璧でありたい、と願う。

-2010年 銅金裕司

銅金裕司(どうがねゆうじ)
神戸市生まれ。海洋学を修めた後、園芸に転向し千葉大学大学院博士課程修了。その後、学術的な新しい試みに挑戦しつつ、メディアアートで美術館、ギャラリーなどで作品展示、ワークショップ多数。学術博士 Ph.D(植物生理学、園芸学)、工学修士(海洋学)。現在、京都造形芸術大学 空間演出デザイン学科教授

2000年以降の主な展示
2001年11月「オーキソイド2001」ロボット・ミーム展〜ロボットは文化の遺伝子を運ぶか?(日本科学未来館)東京 
2003年7月「プラントロン」グリーンスペース展 東京藝術大学・ワイマールバウハウス大学交流展 ワイマール大学 ドイツ 
2003年 10月「オーキソイド2003」人とロボット展(パリ日本文化会館)フランス 
2004年 3月 「voice plantron2004」OSAKA 04春・花・生−21世紀の芸術と生命の交差 大阪府現代美術館CASO 
2004年 9月 「プラントロン&受胎振動2004」 セントラルイースト東京
2004年 10月 「プラントロン in 光州ビエンナーレ」光州ビエンナーレ 韓国
2004年 10月「オーキソイド2004」「人、場所、共存」(金沢21世紀美術館企画展示)
2004年 12月 「植物カメラ」新花論 東京都写真美術館 
2005年 1月 「受胎振動2004in ask」 art space kimura ASK? 東京
2006年 1月 「美容音楽」art space kimura ASK?  東京
2007年 7月〜12月 森のなかで 粘菌プラントロンほか 田辺市立美術館 熊野古道なかへち美術館、和歌山県立近代美術館
2007年 11月 サイレントダイアローグ展 NTT ICC
2008年 3月  生と死の半分あるいは「manuality」ASK?2008 art space kimura ASK?
2008年 6月  CO2キャッチャー展 ギャラリーO2
2008年 10月 エロ、エゴあるいはエコ・サピエンス展ASK?2008 art space kimura ASK?
2010年 1月 銅金裕司 展「6本目の指@ASK?2010」
2010年 12月中村恭子 銅金裕司 展

百刻みの刑
ランと昆虫のバラバラな各個(断片)が粘液で繋がって、一個の生物(全体)に再配置される絵を描きました。私はこの意味やイメージを、バタイユが説いた中国の処刑法「百刻みの刑」に強く見出しています。受刑者に阿片を投与し、意識が混濁している生身の身体を、鋭利なナイフで百塊の肉片に切り刻むという、中国の清の時代まで行われた、歴代中国王朝が科した刑罰の中でも最も重い刑とされています。この処刑法が残酷で非人道的な行いであることは間違いありません。しかし、怖ろしい処刑のはてに、朦朧とした中、まるで快楽の極致の表情を浮かべながら四肢を失っている受刑者の様子には、傍観する観測者に(あるいはもしかすると受刑者にも)即自の錯覚が告発されるであろう点において、未だ自我以外の人間像や価値観を持つに至っていない人間の問いがあるように思います。
-中村恭子

中村恭子(なかむらきょうこ)
1981年 長野県生まれ
2004年 東京工業大学第二回DiVA芸術科学会展 奨励賞
2005年 東京藝術大学美術学部日本画専攻 卒業
2007年 同大学大学院修士課程 修了
2010年 同大学大学院博士課程 修了 博士(美術)取得
現在 早稲田大学先進理工学研究科 電気・情報生命専攻、細胞分子ネットワーク研究室 博士研究員(日本画、生命美学)

2007年以降の主な発表
2007年3月 長野県高森町蘭植物園企画展: 中村恭子展「植物的方法」
9月 東京藝術大学120周年記念企画「自画像の証言」展
2008年1月 第47回全日本蘭協会主催「サンシャインシティー世界のらん展2008」中村恭子日本画作品展
3月 長野県高森町蘭植物園企画展: 中村恭子展「ランの解剖学」
2009年 1月 第48回全日本蘭協会主催「サンシャインシティー世界のらん展2009」中村恭子日本画作品展
2月 生命の解剖学-生きた自然を描く 中村恭子日本画作品展
5月 日本ナボコフ協会2009年大会: ミニ展覧会+口頭発表
2010年 1月 第49回全日本蘭協会主催「サンシャインシティー世界のらん展2010」中村恭子日本画作品展
3月 第4回内部観測研究会 口頭発表「ランの解剖学: ランとイメージの創作性」

※全文提供: ASK? art space kimura


会期: (art space kimura ASK?)2010年11月30日(火)-2010年12月16日(木)
             (ASK?P)2010年11月30日(火)-2010年12月11日(土)
オープニングパーティー: 2010年11月30日(火)17:00~

最終更新 2010年 11月 30日
 

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