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中山ダイスケ:Ornaments
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 11月 02日

画像提供:児玉画廊

近年では、舞台美術、店舗デザインなど、現代美術からその周辺分野にまで広くクロスオーバーした活躍を見せている中山ダイスケ。今展は2005年ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡)での個展「Smells Like Rainbow」以来5年ぶりとなる新作個展となります。スタジオ食堂やNYを拠点に活動していた90年代以降、他者とのコミュニケーションや自身の深層情景など、インスタレーションや立体造形からペインティング、ドローイングに至るまで、その時々のテーマや関心事に即した手段で多くの作品を発表して来ました。

今回の個展「Ornaments」では、文字通り「飾り」をキーワードにして、中山自身が改めて自己と日本の社会(環境あるいは価値観)との接点を紐解いていく様子を可視化するものです。自らを取り巻く「環境や世界を、いかに肯定的に、そして希望を持って捉える事ができるか」との作家の言葉からは、毛嫌いすることなくさまざまな価値観を知り、認めようとする肯定的な視線を受容し、そして体現する為の媒介として提示しようとする意思を汲むことができます。

これまでとは大きな変容を遂げた今回の新作の背景にあるのは、空間や舞台などのアートディレクションやコンセプトメーク、地域デザインなど、ものの「価値観」と深く関わる仕事に多く携わることによって、現在中山自身の視点 がやや達観した「空中をホバリング」している状態にあるからこそ見えてくる、美しさの新たな概念、それをもって現在の日本の社会が作り出している様々な景観もまた固有の美、日本の美である、と肯定してみる、というテーマです。

誰しもが「日本の原風景」として心に描く情景にはそこまで大きな差異はないでしょう。しかしながら、ふと現実と対峙すれば、その理想的な風景を目にすることは容易くはありません。かつて誰かが人知れず野山に赴き描いたであろう絵画の中や、それに類する「人間臭い」虚構の中にこそそうした原風景は生き残り続けていて、現実社会の景観とは次第にかけ離れていくのが実情でしょう。そうしたギャップを埋める、否、むしろそれをこそ肯定し愛でること、そ れが今回中山が示している一つの価値観の在り方です。飾るという行為、それに付する意味合いは、原風景に景観と価値観の変容をもたらし続ける現代社会のメタファー。ベースとなるのはディスカウントショップなどで入手した出自 不明の「人間臭い」風景画で、その上にプラスチック板やカッティングシートなどのケミカルな素材を景観に模して「飾り」、都市と山野、人の手仕事とあからさまな加工物、さまざまなレベルで同一平面上に起こる差異と違和感を敢 えて分かりやすい図式に変換し、露呈させます。日本の現代社会に生きる、中山自身も例外ではない一個人として、どこに価値基準を定めるか。それにはまず現在を直視すること、そして過去においてもそしてこれからもそうあるよう に、現社会が進行形で「飾り」、変容させていく価値観とともに自らを柔らかく変えていくことで、ともすれば毛嫌いされがちな現代社会に起因する新しい景観も美しい日本の原風景として愛し得るのかもしれない、という仮定と前提 を条件に、中山が比喩として提示するのは、その関係性の可視化としての作品ということになるのでしょう。

※全文提供: 児玉画廊


会期: 2010年11月6日(土)-2010年12月18日(土)11:00 - 19:00|日・月・祝休廊
レセプション: 2010年11月6日(土)18:00~

最終更新 2010年 11月 06日
 

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