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姉川たく 展
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 9月 14日

画像提供:ナンヅカ・アンダーグラウンド|Copyright © Taku Anekawa

約2年半ぶりとなる姉川たくの新作個展。今回の展覧会に向けて、姉川はドローイングと刺繍のコンビネーションによる大作の平面作品4点と、刺繍による絵本作品のシリーズを発表します。「 なんにも知らない」と題された今回の展覧会は、姉川の得意とする奇異とコミカルという素材を秘められたストーリーによって紡ぎ上げた渾身の新作シリーズからなります。

姉川たくは、1970年兵庫県神戸市生まれ。1995年に神戸芸術工科大学大学院修士過程を卒業した後、主にアニメーションやデジタルコンテンツといったメディア・クリエイティヴの現場にて活躍する一方で、2002年以降アーティストとしての自画像を模索するべく、刺繍を用いたアートワークに取り組んできました。

姉川の作品は、インターネット上に落ちている無数の画像、雑誌の切り抜きなどを基に、意図的な無計画性によって構成された画面を得意としています。姉川の画面には互いに関連性を持たない様々な要素が登場します。奇怪な人物、着飾った手、虹、極端にカラフルな惑星や山、昆虫、ガラス玉、椅子、アンモナイト、雷、キノコなど、このように一見すると脈略を欠いたイメージの羅列に思える姉川の描く世界は、しかしハイテンションとハイスピードの織りなす今日の東京という都市の持つ特有の表情を的確に表しています。「いかにバカバカしい画面を生み出すか」と語る姉川は、計算されたメッセージ性や用意周到なコンセプト提示といった現代美術の主要な条件に対して、常に純粋なる抵抗を試みています。しかし、そうした姉川の創作姿勢が、今日の拡大した芸術と美の不幸せな関係に対してむしろ保守的であることは、意外な盲点であるようにも思えます。

姉川の独創性は、1999年に話題となった人気子供番組「ポンキッキーズ」における「なぞのやさい星人あらわる」において大きな脚光を浴びたように、「奇を衒う」という発想を生まれながらに持ち合わせている点にあります。姉川の作品には、「本当は恐ろしいけど、どこか笑えてきてしまう」といったような奇異な場面が頻繁に登場します。人の深層心理に、ほんの僅かに触れて、また逃げ去るような、絶妙な空気感を持つ姉川の作品は、計算された悪戯心とフェチズムの絶妙なバランスで成り立っているのです。

姉川は、今回の個展に寄せて、次のような詩を謳っています。
なんにもわからないし、なんにも知りたくない。
どうしようもないし、どうにもしようがない。
感情はすぐに流れていくし、昨日のことは忘れてしまう。
結論なんて、どこにもないし、むしろ知りたくもない。

インターネットはくだらないからスキ。テレビはバカだからスキ。
わからない可能性に恋してる。
身体全体でぎりぎりしながら作る。

※全文提供: ナンヅカ・アンダーグラウンド


会期: 2010年9月25日(土)-2010年10月23日(土)

最終更新 2010年 9月 25日
 

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