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石塚雅子:夜と昼
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2010年 8月 17日

《夜と昼》2010年
油彩、キャンバス|97×162cm|Photo: SASAKI Toshiharu | 画像提供:a piece of space APS|copy right(c) Masako Ishizuka

APSの企画シリーズ:a piece of workの第20回目。APSでは2008年に第1回目の「石塚雅子展:庭」を開催しましたが、第2回目にあたる今展は、APSとギャラリー・カメリアの2か所での共同開催とになります。

石塚雅子は1989年に女子美術大学を卒業。1990年に作品の発表を始め、その後、「現代日本美術展」(1994年東京都美術館)、INAXギャラリー(1993年)、ギャラリー日鉱(1998年)、うらわ美術館(2001年)、「TAMAVIVANT」(1993年と2008年)、と活発な活動を続けてきました。

1990年代を通し、求心力のある螺旋・渦巻状の抽象表現を発表し、注目されましたが、2000年に入るとその手法を一変させ、木々や花に寄り添い、線を1本1本描写し始めました。2008年にAPSで展示した作品は、空間から「庭」を見渡すかのように壁面3面を使い、観るものを木々の合間から「庭」の彼方へと案内してくれたのです。

今展では、「彼方へと繋がる時空」にとともに、「彼方からやってくるもの」へと視点を深め制作した新作を展示いたします。

石塚雅子
石塚雅子は1990年に作品の発表を始め、「渦巻」「螺旋」という抽象的なモチーフを約10年間制作し続けた。1998年にギャラリー日鉱で発表した作品群はその集大成であり、作家としての立場を確立した個展であった。しがしながら、2000年に入ると今までの描き方を踏みつぶすかのように「庭」におり、木や花の線を1本1本緻密に描写し始めた。そして、2008年、APS空間から「庭」を見渡すかのように壁3面に展示した作品では、木々の合間に描かれた空気や水のようなものを入り口に、観るものを「彼方へ」と誘った。手前に描かれた木々を見ていると、不思議と空気や水のようなものに心が奪われ、奥へと惹かれていくのであった。

APSでの個展以降の2年間について石塚が書いた文章を引用する。

2009年は油絵を離れ水墨画や書(かな)の仕事をしていました。日本の伝統的な表現や空間意識について考えたかったからです。今展は「四季の庭」を主題に、古典の様式を生かした新しい構成を模索する予定でした。

ところが、父が亡くなって絵が描けなくなり、ようやく仕事を始めると、制作途中だった作品がすべて黒い絵になっていったのです。観念的な構成では描ききれないものが出てきたのです。描く事が精神と深く結びついている以上、当たり前の事かもしれませんが、当初の主題と全く変わってしまいました。普段のように全体の方向を考えて描き進めることが出来ず、黒い画面を眺めていると行き詰まって苦しくなるようでした。ある日、小さな素描をしたことがきっかけとなり、光が射すような明るい部分を描きたくなったのです。「夜と昼」はそんな中から生まれた主題です。前回の作品は湿気を多く含む空気と、風や霧と共にある庭でした。窓から見渡した「彼方へ」と繋がる時空を表現したものです。今度は「彼方から」やってくるもの、それを共に描きたいと思っています。

今展、「夜と昼」では、「”彼方へ”と繋がる時空」が螺旋のように「”彼方から”やってくるもの」と調和し循環していく様を見せてくれるのだろうか。どこまでも真摯に自分と自分から広がる世界を見つめる石塚、きっと観るものを豊かに包み込んでくれる作品と出会わせてくれることだろう。

全文提供: a piece of space APS


会期: 2010年9月8日(水)-2010年9月25日(土)

最終更新 2010年 9月 08日
 

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