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カロンズネットについて
運営情報
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2008年 12月 25日

カロンズネットは、今日の現代美術が、マイノリティーの嗜好品/商品対象ではなく、日本の美術史・文化史の最終ページを刻むべく、我々の創造力を刺激し、新たな表現の可能性を見出す対象として扱われないものか、そのような環境を生み出せないものかと考える者たちが集まって立ち上げました。

明治以降、日本の作家輩出ルートの大動脈となった団体展システム、師弟システムは、90年代のバブル崩壊とともに衰退の一途を辿っています。実際、今日の日本を代表する若手アーティストらに、団体展/師弟システムを経て世に出た者はほぼ皆無であるのが現状です。

今日、若手アーティストのほとんどは、欧米では一般的な「独立型」と呼ばれるフリー・エージェント制を採用し、発表や販売の機会を自ら探し求めています。そして、そのプロモーション・販売業務を実際に行うのが、90年代から台頭してきた、欧米エージェント型の現代アートを専門とする企画画廊です。しかしながら、現代アート専門の企画画廊と呼べるものは、全国でも120社に満たず、毎年述べ5千人を超えると言われる、美大/専門学校卒業生を十分に包容できる商業的受け皿は、いまだ小さ過ぎるのが現状です。

この要因の一つには、現代アート作品がプライマリー市場では比較的安価にしか設定できないこと、したがって画廊業の収益に限界があることが挙げられます。この要因をさらに後押しするその他の要因も絡み、複雑な状況にあります。しかし、総体的ではなくとも、何らかの角度から我々の手で行える処方箋を見出すことが出来るのではないか、カロンズネットメンバーはそう考え、おおよそ3ヶ月間を費やして、現状の調査と、推挙可能な問題点を一つずつ検証する作業を行ってきました。

先述の、アーティスト輩出システムの推移の中で、流浪の民となったのはアーティストの卵たちだけではありません。もう一つ挙げるならば、それは、「現代アート」の評価指針の後ろ盾になるべく学会、あるいは学術的機関と言えます。バブル崩壊以前に権威をふるった団体展型輩出システムは、美術と学術研究が密接な繋がりを保つことに貢献していました。システムの権力と大学の権威が絶妙な関係を保ち、学術的解釈による後ろ盾が現代アートを学術的な研究対象として、その地位を守ってきたとも言えるでしょう。前衛アートに対しても、それが「前衛」であるか否かの裁きを下す権威が、当然、その学術分野にあったと言えます。

この関係が、団体展システムの衰退と共に弱まっていきます。そして今日の現代アートは、それが前衛であるか否かの議論以前に、芸術としての学術的な評価を得るチャンスを失ってしまいます。今や現代アートは、「商品」としての価格あるいは購買需要のみが、その価値を表すものかもしれません。そしてこの動向は、アーティストとマーケットの繋ぎ役である画廊側の目的とも合致し、アーティストに商業目的一辺倒の創作活動を肯定させる、そんな環境を生み出す危険性を孕んでいます。

現代アートは、十分な専門教育と技術を身につけ活動するアーティストが、文字や音と並ぶ、人類の叡智が生んだ表現手段の一つとして、「形」を創造するものです。それは想像力・想像性の進化を求める人類の性による営みとも言えるでしょう。創造性を画一的な表現の中に閉じ込めず、感性の共鳴を促す新たな形を求めようとするアーティストの意思を後押しすることは、文化的・思考的発展を許すことにも繋がると考えています。

何がアーティストの輩出、活動を後押しし、現代アートの歩む道を「芸術」として支えることができるのか、その結論がカロンズネット誕生となりました。

2008年12月
カロンズネット編集部

最終更新 2019年 7月 26日
 

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