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荒木経惟:センチメンタルな旅 春の旅
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2010年 4月 28日

画像提供:ラットホールギャラリー

 

「チロちゃんは春日部のおばあちゃんとこから生後4ヶ月のときにヨーコ(妻)がもらった。」
-荒木経惟 「愛しのチロ」 1990年

それから22年という長い年月、荒木のモデルをつとめた愛猫チロが2010年3月2日に他界。人間の年齢で言えば105歳という大往生だった。「あんなにオレを愛してくれた女はいない」とチロのことを話す荒木にとって、チロは早世した妻ヨーコに代わり支えとなってくれた、かけがえのない存在であった。ヨーコが亡くなってから20年、再び愛するものを失う悲しみに直面した荒木は、生と死の間を流れ行く日常は「人生という旅」であることを、写真を通して語る。

今回の展覧会で、荒木はチロの最後の数ヶ月を撮った作品80点を発表する。バルコニーを歩くチロ、ベッドに横たわるチロ、カメラをじっと見つめるチロ。写真に写るチロは、荒木のレンズを通した写真にもかかわらず、まるで目の前で触れているような気にさせる。鳴いたり、甘えたり、寂しがったり・・・。表情豊かなチロと風景は、ラブ・ストーリーのように流れ、荒木の深い愛情が伝わってくる。そして、チロが去ったあとの空や花の風景は、このうえなく愛しく切ないメロディーに聞こえてくる。

ラットホールギャラリーでは、今回の展覧会にあわせて写真集『センチメンタルな旅 春の旅』を刊行いたします。

ヨーコとの最後の時間を描いた写真集『センチメンタルな旅 冬の旅』(1991年)から20年近くを経た今、荒木は愛猫チロとの最後の時間を綴った写真集を発表する。「写真集は棺桶」であるという荒木にとって、今回の写真集は特別な意味をもつ。「センチメンタルな旅 春の旅」は、チロにとっての旅の終わりでもあり、また始まりでもある。この世での最後を迎えるまで、荒木のためのモデルとして常に最高の表情をみせたチロは、荒木の唯一のミューズ(女神)だったのではないだろうか。

※全文提供: ラットホールギャラリー


会期: 2010年6月11日-7月18日

最終更新 2010年 6月 11日
 

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