狂った赤の向こう側 |
アートワーク |
執筆: 小金沢 智 |
公開日: 2008年 11月 29日 |
窓と蛍光灯に貼付けられた赤いフィルムによって、真っ赤に染め上げられた展示室。東はその中で、花器としてはおよそ考えにくいドラム缶とトイレに毎日違う花を生け込んだ。作られては翌日に消え去る即興性の強い作品だが、モニターにはその様子を定点観測した映像が流され、壁には作品を写したポラロイド写真が架けられ、一つ一つの作品はデータとして日々蓄積されていく。 「植物の発する赤は不思議な色だ/多くを語り多くを連想させる」。コンセプトに綴られた文章からも明らかなように、東がここで提示しようとした「赤」が世間一般的な色としての「赤」というよりは「植物の発する赤」であることは注目されてよい。と言うのも、わたしたちは花/植物から赤という色の豊穣さを学んできたと思うからである。少なくとも現代の日本に生きるわたしたちにとって、赤は血の色というよりはまず花/植物の色ではないか。だから東が今回展示室を赤く染めたのは、まずなにより、花/植物から得た赤を植物に還す行為だったと考えることができる。東は意識として、AMPGでのこれまでの流れを一度「リセット」したかったという。では花/植物だけではなく展示室各部に赤がまんべんなく折り重なった空間は、生命が生まれ、育まれる母胎と見立てることもできないか。決して大袈裟ではない。そこは東にとって確かに、転生の場として機能したに違いなかったのである。 作品詳細アーティスト: 東信 |
最終更新 2015年 11月 01日 |