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今村朋代 展
編集部ノート
執筆: 田中 みずき   
公開日: 2010年 3月 05日

個人的なことに迷ったり、日常の些細なことに疲れたりした時に是非お勧めしたい展示。そんな時には、商業ビルの立ち並ぶ賑やかな大通りから一本奥の、静に佇むギャラリー58に逃げて欲しい。本展覧会は、一旦立ち止まって周りを見直す姿勢を思い出させてくれる。一人でも良いし、心の許せる人と、あるいは何か話したいことがある人と一緒に行くと素直に話せるかもしれない。
展示されているのは油絵8点と、写真に版画を施した作品2点の全10点。モチーフは主に車道の風景だが、雨のせいか立ち眩みか、ぼやけている。作者の、ぼやけたコンタクト装着時の体験がきっかけで生まれた作品群は、「視界のぼやけそのものを自らの手で描きたかった」という制作の発想が面白い。「見えていない」ということを見る行為で体験する不思議なパラドックスが、現場で作品を観賞する楽しさに繋がっていく。朧な風景は、風景が見えていないということではなくて、「朧な風景」をしっかりと見ているのではないか。観賞後にそんな自問をしながら日常生活に戻れば、自分の見ているものや見てきたものについて考えが変わるかもしれない。

最終更新 2010年 7月 02日
 

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