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根本裕子:陶 幻視のいきもの
編集部ノート
執筆: 小金沢 智   
公開日: 2009年 10月 20日

会場の床から芳名台に至るまで置かれている根本の作品は、非常な驚きをもって鑑賞者を迎え撃つ。動物とはたして言うことができるのか、根本が焼き上げるのは体の所々が不自然に変型した動物らしきものにほかならない。ある犬らしきものはしかし手足が異常に長く、兎のような耳を持つものは後ろ足がくっ付いてしまっている。でこぼことした体つきのものもいれば、口の部分がぽっかり空いてしまっているものもいる。 陶器であるがゆえの見た目の硬質さがその異常さに拍車をかけており、一見すればユーモアのあるそれらのいきものは、見れば見るほど恐ろしい。十文字美信が最近発表した人間の顔が変型してい≪FACES≫のシリーズや、フランシス・ベーコンの顔や体全体が変型している一連のペインティング、あるいはより古くはジュゼッペ・アルチンボルドの≪四季≫のシリーズや歌川国芳の寄せ絵の作品にも通じるが、普段見知っているものが変型されているがゆえのギャップは、まったく新しいイメージの創造よりも私たちに与える驚きの度合いが遥かに大きいのかもしれない。

最終更新 2010年 6月 27日
 

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