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未完の横尾忠則
編集部ノート
執筆: 小金沢 智   
公開日: 2009年 10月 14日

横尾忠則の芸術の本質を「未完」とし、たとえば過去作とそれを元にした近作を合わせて展示することや、ルソーの作品を引用した作品の展示をその元になっている作品の画像(作品が展示されているわけではない)とともにするなど、様々なものからインスピレーションを受け制作する横尾の言わば不安定で動的な点に注目して作品を見せる展覧会。「Y字路」のシリーズでは作品の横に制作風景の映像を流し、展示室毎に滝の絵画やオブジェをさりげなく展示するなど、展示にも工夫が凝らされている。比較的小さな展示室がいくつか組み合わせられているためコンパクトな印象を受けるが、その内容は濃密だ。 なお金沢21世紀美術館から徒歩10分ほどの距離にある石川県立美術館では、「石川県立美術館開設50周年記念
 久隅守景展 −加賀で開花した江戸の画家-」(2009年9月26日~2009年10月25日)を開催中だ。過去の画家が当たり前のように中国や日本の画家の作品の引用を行い、しかしそのことによってこそ自身の画業を深めていることの良質な結果がその展覧会には示されている。「現代美術」ではないからと言って見逃すにはあまりに惜しい展覧会であり、時期が重なっているようであれば本展と合わせて強くお薦めしたい。どちらも過去の作品の優れた引用と解釈から独自の作品に至っているという点で共通している。

最終更新 2015年 11月 03日
 

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