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山本幸夫:FACE
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 4月 18日

画像提供:COMBINE

私が美術高校に入学し、初めての彫塑の課題はベートーベンのデスマスクの模刻だった。そのデスマスクを何も考えることなく似せようと模刻していたのを覚えている。それから40年近く。マネキンの造型師としての職に就き、顔造りとは切り離せない環境にあった。そんなせいもあって顔には特別な想いを抱いている。ここ数年前から私は何かを考えたり作りたいと思った時、出発点として人の顔を描いたり粘土で作ったりすることにしている。その制作過程の中、色々な物の見方や発見がある。

その形の中に光の流れを見つけ影を追うといった作業を繰り返す。“喜”“怒”“哀”“楽”それ以外の感情。複雑な感情が表れては消えていく。そして“無”。たくさん顔を造ってきた今。デスマスクには深い意味があると感じる。それは決して死を表現しているのではなく、あらゆる物から解き放たれた姿なのではないか。むしろ穏やかな眠りの姿のように見える。その人が持っている本来の素顔なのではないだろうか。自分や他人を意識せず感情や表情を抜き取った本来の素顔を造ってみたい。
(山本幸夫)

【作家プロフィール】 
昭和23年7月 京都生まれ。41年日吉ヶ丘高校 美術コース彫刻卒。42年㈱ヤマトマネキン入社  平成14年㈱ヤマトマネキン退社 15年山本工房開業 22年4月 61歳に至
  ※全文提供: COMBINE

最終更新 2010年 5月 20日
 

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