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根本寛子:音なき音
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2010年 4月 06日

《Unititled》 2009年 61 x 61 cm|油彩、キャンバス 画像提供:メグミオギタギャラリー copy right(c) Hiroko NEMOTO

1981年生まれの根本寛子は、武蔵野美術大学、東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を経て、2008年に東京藝術大学大学院美術研究科修士課程を修了しました。同年12月、谷門美術での「debut! ver.HIROKO NEMOTO 根本寛子個展」では、少女らしい題材に血やピストルといったサスペンス要素を取り混ぜ、張りつめた情景を丁寧な筆致で描く作風が高く評価されました。 近年の絵画のトレンドが見る人々にとっつきやすいウケそうなものに向かっているのに対し、根本は自分自身が見たい世界を作品に表します。今展のタイトル”Battement de cil”は、フランス語で「まばたきの音」を意味します。「聴こえそうだけれど、聴こえない。存在するなら聴いてみたい。聴こえない音でも聴きたいと思えば、いつか自分の中で音を成す日がくる。見たいと思った事で初めて見える世界を作品に形づくるように」との思いを込めます。

テレビ、雑誌、広告、ファッション、さらには展覧会などで目にする膨大な数の作品。実に様々なヴィジュアル・イメージをシャワーのように浴びる現代では、あらゆる作品に既視感がつきまとっています。イメージ漬けが常態となることで、新しいものを見たい、あるいは聴きたいという私達の意欲も失われつつあるのかもしれません。根本の姿勢は受動的にイメージを浴び続ける私達へのアンチテーゼであるとも言えるでしょう。

子供の頃に手に取ったことがあるようなぬいぐるみ、カーテン、あるいはコーヒーカップといったモチーフは見る者に既視感を与えますが、根本の作品には独特の緊張感があります。ぬいぐるみなど主たるモチーフは背を向け、その顔立ちや表情は私達の想像上にしか存在しません。彼女の作風と言うべき、近づけそうで近づけない、近づけば何かが壊れてしまいそうな不思議な距離感は見る者の目をとらえて放しません。「Battement de cil」にどうぞご期待下さい。

※全文提供: メグミオギタギャラリー

最終更新 2010年 5月 20日
 

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