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和ガラス - 粋なうつわ、遊びのかたち -
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 4月 01日

《藍色ちろり》 江戸中期 18世紀|サントリー美術館蔵

日本では、飛鳥時代には、原料から加工まで一貫した国産ガラスの製造が可能となり、ガラス玉類(ビーズ)が装身具などに使われていました。しかし、本格的にガラスの器作りが始まったのは、江戸期のこと。南蛮船がもたらすヨーロッパのガラス器に憧れ、17世紀前半から中頃までには、長崎で吹きガラスが始められたと考えられています。以来、陶磁器や漆器と同様に、さまざまな生活用具が作られるようになりますが、他の素材と異なり、光を透し、響きあうガラスは、日常に独特の輝きを放ちます。盃や徳利、皿などの飲食器はもちろん、ガラス製の櫛・簪や文房具、ビーズで飾られたたばこ盆は、時におしゃれの代名詞となり、時に数寄者の的となりました。また、ガラスの虫籠や吊灯籠など、今ではほとんど消えてしまったものも少なくありません。
  本展覧会では、江戸から明治にかけて、驚くほど、さまざまな物がガラスで作られ、生活の隅々に浸透していった様子をご紹介します。粋で、遊びごころ一杯の「和ガラス」の美をお楽しみください。なお、本展覧会会場吹き抜けスペースでは、今では日本で2軒だけになってしまった江戸風鈴によるインスタレーションも展開します。
  【展示構成】
プロローグ:「写す」- 憧れの和ガラス
南蛮船がもたらしたヨーロッパの舶載品に憧れ、和ガラスの製造は「写す」ことからスタートしたと考えられます。まずプロローグでは、西洋のガラス製品にならったことを示す和ガラスや、製造に関わる資料などを紹介します。 第1章:「食べる・飲む」- 宴のガラス
文献などをひも解くと、まず暮らしに取り込まれた和ガラスは、レンズ類や食にまつわる器が主流だったことが分かります。透明で清々しいガラスは、特に涼を呼ぶ宴の舞台に登場したことでしょう。第1章では、食と宴の席に取り入れられていった、美しく涼やかなガラス器の数々をご紹介します。
  第2章:「装う」- みだしなみのガラス
皿や盃ばかりでなく、次第に身を飾る装身具にも、ガラス製のものが登場します。「びいどろのかんざしむらのはで娘」(誹風柳多留・安永5年[1776])と詠まれたように、櫛・簪・笄といった和ガラスは、小粋な娘たちに人気があったようです。また、男性の装いに、ガラスの印籠や根付などがあらわれました。第2章では、洒落者にもてはやされた和ガラスを紹介します。
  第3章:「たしなむ」- 教養と嗜好のガラス
他にはない透明な素材のガラスは、文具や喫煙具といった、たしなみの場面でも活用されました。こうした嗜好性の強い和ガラスは、特に茶席に登場する機会が多かったに違いありません。ガラス製の茶壺や振出のほか、煙草盆や煙管なども見られます。第3章では、数寄者に愛された和ガラスをご紹介します。
  第4章:「愛でる」- 遊びのガラス
涼をよぶガラスの素材感は、夏の花器や風鈴、金魚玉などに取り入れられます。また、芸を凝らした雛道具や、ガラス棒入り虫籠やビーズの吊灯籠など、さまざまな細工物が作られました。こうした日本の手わざを再認識させる和ガラスの中には、今では見ることのできないものも少なくありません。第4章では、目に愛らしい、遊び心一杯の和ガラスを紹介します。
  ※全文提供: サントリー美術館

最終更新 2010年 3月 27日
 

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