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上田順平:帰ってきたウラシマピーターパン
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 3月 31日

《ウラシマピーターパン》 2009年 陶器|h162×w112×d144 cm photo: Kazuo Fukunaga 画像提供:イムラアートギャラリー copy right(c) Jumpei UEDA

上田順平(1978年 大阪府生まれ)は、日本の伝統や大衆文化をモチーフにした作品を制作してきました。彼の手から生み出される作品は、生活の中で見慣れているものを違う視点で見せるだけに、私たち現代人を戸惑わせつつも、強く訴えかける力を持っています。そのかたちは単なるパーツの寄せ集めではない新しい生き物の誕生であり、国や文化を越えた造形と言えるでしょう。  しかしその表現は、陶磁器という素材によって制作されている点において、重要な意味を帯びてきます。上田は、異なるキャラクターの組合せや性別の同居、機能と装飾の関係など、様々な要素の混在により作品を構成します。この混在は、現代美術と工芸、西洋と近代以降の日本など「間(はざま)」にある陶芸や自分自身、今の日本をかたちにしたものと言えます。そしてこの表現は、日常的に馴染み深く、「うつわ」になり「おきもの」にもなる、まさにはざまにある「焼きもの」だからこそ可能であり、あらゆるものや思想を受け容れ広がってゆく可能性をもっているのではないでしょうか。この「焼きもの」という特質と上田の創造性が、強く深く結びついているのでしょう。
 昨今、日本的な要素をモチーフにした作品は多く見られますが、上田の作品は表面的な見た目の面白さに終始しない、卓越した技術と感性、探究心に裏付けられています。
 今回の展覧会はパート1、パート2の二部構成とし、前半は2009年に岡本太郎記念館で発表した大作を展示し、後半では、常に表現の広がりを求める上田が今まで行ってきた装飾を可能な限り排除した新作を約5点展示します。特に後半は今後の上田の方向性を知る上で見逃せない展覧会となります。昨今、五島記念文化財団の美術新人賞を受けた上田は、9月からメキシコへ渡り、一年間の予定で滞在制作を行います。
 ますます広がってゆく上田順平の今とこれからに是非ご期待ください。
※全文提供: イムラアートギャラリー

最終更新 2010年 4月 03日
 

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