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椛田ちひろ:パラダイムクロッシング
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2010年 3月 30日

画像提供:Nroom artspace copy right(c) Chihiro KABATA

ホワイトキューブの1階をへて住空間の2階を眺めれば、作家によって創られた異形の世界が現実世界へと溶け込み、あるいは反発する様を視るだろう。Nroom artspaceの1階と2階とに分けられた異なるふたつの空間に、2種類の異なる作品を展開する。 それぞれの階層には”パラダイム”という設定が与えられる。パラダイムと言うと大仰に聞こえるかもしれないが、先の椛田の2つの個展、”シュヴァルツヴァルト・メトリック”(2009.9/artlantico gallery)と”アンユナイティ”(2009.10/youkobo art space)でのそれぞれの展開をパラダイムと捉え、ボールペンと油彩とで展開されていたそれぞれの手法を交換する、というものだ。不可視のイメージの所在を探るという明快な目的のもとに制作された”シュヴァルツヴァルト・メトリック”のボールペンのシリーズと、イメージの所在自体への疑念を含め、模索することそのものが結実化した作品”アンユナイティ”の油彩のシリーズは、両者の本質はけして大きく異なるものではないが、表裏を成す立場にある。 椛田は描かれるべきイメージを”視えないもの”として捉えている。イメージの存在に対する希求と懐疑という、二面的なこの立場に合わせたそれぞれの手法が、ボールペンと油彩という素材を媒体に完結したのが先の展覧会だ。今回の展覧会ではそれを交換する。手法を交換することにより目的に対するアプローチも異なってくるだろう。それが両者を近づけ、あるいは遠ざける。

ふたつのパラダイムは階を隔てながらも絡み合い、観客が物理的に階層を行き来することで交錯する。はじめに視る光景と終わりに視る光景は、違うものになるだろう。ふたつの階層を通過することで、観客の内でパラダイムはシフトする。
-椛田ちひろ

全文提供: Nroom artspace

最終更新 2010年 4月 03日
 

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