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超京都
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 3月 10日

京都市指定有形文化財 杉本家住宅 画像提供:超京都実行委員会

[超京都]は、京都・大阪・東京・岐阜の現代美術専門の11 画廊によるアートフェア(見本市、展示即売会)です。日本における現代美術の先端的作品、各々に意義ある活動を続ける各画廊の取り扱い作家作品をご紹介いたします。

本催しの目的は、現代美術をこれまで以上に広い範囲にご理解いただき、知識を深めていただきながら、さらに作品購入という新たな関わりへとお誘いするのが第一の目標です。そのために、各界の世代交代の始まった京都に新たな現代美術ファン層の拡充をはかり、市内の主要なアートスポットとの連携を通じて、現代美術を京都の代表的な知的産業・観光資源のひとつとする新たなツーリズムとして提案したいと考えます。また、数ある京都市内・近郊の芸術系大学に向けては、芸術家育成の現況において、批評やアーティスト個々の表現力・精神性のみならず、現代美術の市場性を知っていただき、それが育成の後押しになるということにも考えを馳せていただきたいと考えています。

昨今、国内外において、現代美術に特化したアートフェアが新たな美術史を築き、そこに参加するプライマリー・ギャラリー個々の活動も、各国の文化・経済面、アーティストに大きな影響を及ぼしています。プライマリー・マーケット=「第一段階のマーケット」とは、アーティストが新しい作品をギャラリーで発表しそこで販売するという、第一次的なマーケットを指します。本催し[超京都]も、自らの力で新人アーティストを発掘し、その紹介や作品の普及に努めるプライマリー・ギャラリーによって構成します。プライマリー・ギャラリーの経営者や代表者を通常ギャラリストと呼びます。[超京都]においても、現代美術の発展や普及に向け具体的な方策や課題を掲げるギャラリストが最新情報を持ち寄り、京都の各界の皆様との実りある情報交換の場としたいと考えています。

[超京都]の超には、都市や分野を超えるという意味に限らず、時代を超えた美意識に向かう意味もこめました。 初回となる今回、会場となる京都市指定有形文化財杉本家住宅には、現代美術に高い関心をお寄せいただき、共催者としての多大なご協力をいただきました。[超京都]は、今後の継続を前提に出発するものです。将来的に、さまざまな近代建築遺構について会場としての可能性を探り、そのときどきのアートフェアの記録と各会場の写真集を兼ねたカタログの発刊も重ねたいと考えています。

会場について
[超京都]会場となる杉本家住宅は、伝統的な京の大店の姿を残す京都市指定有形文化財のひとつであり、ふだんは一般公開や貸し出しをしていません。財団法人奈良屋記念杉本家保存会では、建築遺構としてのみならず、独自のプログラムやマスメディアをつうじて、代々受け継がれてきた暮らしの文化の紹介にも努めておられます。大店に伝わる暮らしの美学に、うつろいとしつらいというキーワードがあります。杉本家の歴史270 年間にそのときどきの<現代的>しつらいがあったと同様、このたびは、<現代美術による2010 年のしつらい>に強い関心を持っていただけたことが、開催へとつながりました。[超京都]開催は、5 月15 日の葵祭をふくむ3日間、杉本家住宅の障子に青葉が映える清々しい季節です。[超京都]では、襖や障子を活かし自然光をメインに作品展示いたします。

出展ギャラリー
ギャラリーキャプション(岐阜)、ギャラリー16(京都)、ギャラリー小柳(東京)、児玉画廊(京都/東京)、小山登美夫ギャラリー(東京/京都)、super window project™+gallery(京都)、東京画廊(東京/北京)、ピクチャー・フォト・スペース(大阪)、NANZUKA UNDERGROUND(東京)、MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w(京都)、山本現代(東京)
公式HP: http://www.chokyoto.com(3 月15 日より)

※全文提供: 超京都実行委員会

最終更新 2010年 5月 14日
 

編集部ノート    執筆:平田剛志


京都三大祭りの1つである葵祭が開催される中、270年間の歴史を有する京都市指定有形文化財である杉本家住宅を会場にアートフェア「超京都 現代美術@杉本家住宅」が開催される。

先週末にも<アートフェア京都>が開催されたばかりだが、「超京都」はこれまでとはかなり趣がことなる。なぜなら、京大工による粋を凝らした技術が遺憾なく発揮された京町家・杉本家住宅を会場としているからである。歴史ある京都ならではの和の空間で見る現代美術は、家屋に流れる時間と調和(あるいは不調和?)し、現代美術の異なる側面を見ることができるだろう。また、普段は一般公開されていない杉本家住宅の内部を見るだけでも、貴重な機会となるだろう。とくに住宅内各所にある照明器具、大座敷から見える座敷庭や台所の走り庭の上に設けられた高窓から差し込む光や新緑の緑が美しい。作品鑑賞と合わせて杉本家住宅に流れる「時間」や家屋内部の細部もまた見てほしい。

だが、集客やビジネスが目的であるアートフェアを歴史ある「指定有形文化財」の京町家で開催することは建物の保存という点では相容れないだろう。京都市内最大の京町家ではあるものの展示会場ではないため、混雑時に多くの観客が来場すれば、建物にとって損傷の原因となりやすいからだ。入場料3000円と高めの設定は、建物の保存を考慮した上でだと思われる。

しかし、京都にはビジネス(観光)と文化財の保存という両立を可能ならしめる蓄積と歴史がある。今後の超京都がアートフェアの新たな伝統の始まりであることを期待している。


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