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のぎすみこ:やくたたず
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 3月 30日

photo by Matron 画像提供:TOKIO OUT of PLACE copy right(c) nogisumiko

『OUT of PLACEにて、a Waste of Space をするための戯言』
物心ついた頃、わたしに貼られたレッテルは「気が利かぬ役立たず」でした。役に立たない物(者)は、価値が無いと思われているような恐怖感と罪悪感がありましたから、ことあるごとに役立たずについて考えない訳にはいきませんでした。
自分の役立たずっぷりに、ずいぶんと心を痛めたりあきらめてみたり、頑張って役に立とうと努めた覚えもあったのに、気付けばせっせっせっせと掻き集めたお金で、せっせせっせと役立たずに精を出している。
「やくたたず」という言葉は、いつの日かわたしの作品の題名になることは、ずっと以前から決まっていたようにおもいます。

昨年、股関節の病気で手術した足は、わたしの役立たずっぷりに中途半端な拍車を掛けてくれました。そして去年、幼いわたしを「役立たず」と罵倒した父親が緊急入院し、年末年始に身体のあちこちにコードを付け、病院のベッドでよれよれになり、口を開いても呂律の回らない父親を見て、頭に浮かんだのは「やくたたず」と言う文字でした。幾度もその言葉が頭に浮かぶと同時に、むしろどんどん自分が柔らかな気持ちになっていくのがおもしろく新鮮で、不思議な感覚でもありました。それから数日後、わずかな回復の中で父親はわたしに電話を掛けてきました。それは言葉は少なくとも、穏やかなものでした。この瞬間「やくたたず」という言葉は、ぴったりとわたしの古く歪な溝にはまり、この題名のための「駒は揃った」と、身体の芯で鐘が鳴った気がしたのです。

『やくたたず』にとってこの話しは、ほんのほんの端っこで、ぶっきらぼうに新たなるスタートや過去の御破算、親子の感動を伝えたい思い等無く、ましてや何かをあきらめたり、すねたり開き直っている訳でもありません。
今はただ、ただ「今」であること。愛すべき全ての役立たずに敬意を表し、新旧交えた作品の個展を開催します。
のぎすみこ/ 芸術家(installation artist)

作家プロフィール
1965年生。1993年からアートに興味を持ち、徐々に独学で作品制作を始める。「いま」の存在を考え、好きな場所で好き勝手な手法で、好き勝手に作品発表をし続けている。 主催・企画・芸術・制作(トータルオーガナイズ)
1995:『27人の二人』展覧会(28人による写真展/新宿:moca foundation)
1996:『PAP de conte'96』(パフォーマンス/ 原宿:PAP factory)『にがおえ展』(ペインティング・パフォーマンス/原宿:PAP factory)
2006:『かくれんぼ』(インスタレーション/横浜:ZAIM 旧会議室)『coma』(ライヴイベント/横浜:ZAIM イベントスペース)
2007:『ひとみ』(インスタレーション/東京:caf'e HOCCO)
2008: C3A設立(ダンス・サウンド・インスタレーショングループ活動)
2009:『出芽(入院展)』(インスタレーション/東京:病院内個室)『牛2』(ダンス公演/横浜:三渓園旧燈明寺本堂内 [ 重要文化財指定 ] ) 個展
2004:『そこからこぼれてくるひかり』(ペイント・インスタレーション/銀座:創画廊)
2006:『かわたれ』(インスタレーション・パフォーマンス/横浜:ZAIM) 『少女風鈴』(インスタレーション/横浜:三渓園旧燈明寺本堂内) 『てのひら』(インスタレーション/下北沢:ギャラリートウキョウジョウ) 受賞歴等
1985:『砂漠の夢』横編ニット組合金賞受賞・山本寛斎賞受賞
2002:『おっぱいマフラー』フィリップモリスK・Kアワード入選
2006:『少女風鈴』横浜三渓園100周年記念企画入選
2007:『かくれんぼ』『おっぱいマフラー』等 GEISAI MIAMI 入選(アメリカ) ※全文提供: TOKIO OUT of PLACE

最終更新 2010年 3月 26日
 

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