| EN |

新津保建秀+池上高志:Rugged TimeScape
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 3月 03日

画像提供:フォイル・ギャラリー

様々なメディアを横断的に行き来し活動を続ける、写真家の新津保建秀と複雑系科学研究者である池上高志両氏による、写真作品を展示致します。 新津保は自然の中の環境情報を対象にした映像とフィールドレコーディングによる風景作品の制作から写真家としての活動を始め、近年は音楽家、プログラマー、建築家と複数のプロジェクトを手掛けてきました。自身の作品として2001年より取り組んできた連作「Binaural-Scape」では、 webネットワーク上で流れ続けている人々の言語活動と地理空間情報の膨大な流動を第二の自然と捉え、カメラという光学装置を通さない、新たな試みも行っています。 池上は複雑系科学における旺盛な研究活動とともに、2005年にICC(NTT インターコミュニケーションセンター)においてテイラークエット流の生成装置を用いたインスタレーションを、2006年にYCAM(山口情報芸術センター)では、音の皮膜が視聴者のいる空間を縦横に移動するサウンドインスタレーション「filmachine」を音楽家の渋谷慶一郎とともに発表。国内外で高い評価を得ています。 今展ではその両者の恊働作業による「RuggedTimeScape」を、新たな風景写真の可能性として提示致します。この作品は、新津保が撮影した光、煙、雲、森などのさまざまな流体運動の画像データと、池上が組んだ高度なプログラムの相互作用によって生み出された、テクスチャーの総体です。ここでは物理的な時間とは異なる、風景の中に存在する主観的な時間が折り畳み、引き延ばされてゆきます。 普段私たちは視覚や聴覚によって、まるで世界を全て認識しているかのように錯覚しています。しかしこの作品に触れたとき、日常では見えていない隠されたものを暴かれたような、新たな経験が加わります。また、作品の画像に現れたゆれや空間のうねりの、純粋な美しさにも驚きを受けるでしょう。 展覧会はこれらのイメージ群と、渋谷慶一郎+evala両氏が制作した実際に展示されている全ての画像データをプログラム変換し、自律生成され続けるサウンドインスタレーションで構成されます。また、展覧会にあわせ小冊子『Rugged TimeScape』も、1000部限定で販売致します。 異なる領域間の恊働のなから生まれる、新たな写真表現の可能性を、どうぞこの機会にご高覧下さいますようお願い申し上げます。 新津保 建秀(しんつぼ・けんしゅう)
1968年東京都生まれ。1996年、映像とフィールドレコーディングによる映像作品の制作を経て、写真家としての活動を始める。以降、写真と映像を軸に、自身の作品制作、さまざまなプロジェクトにおける建築、電子音楽、映画、文藝、情報デザインとの共同作業を手掛ける。
著書:『記憶』(フォイル)ほか
関連書籍:『Tokyolife:Art and Design』 (Rizzoli New York)『季刊 Inter Communication 音楽/メディア』(NTT出版)『建築と写真の現在』(TNプローブ) 『‘おいしく食べる’の科学展』(科学未来館)など。 池上 高志(いけがみ・たかし)
1961年長野県生まれ。1984年東京大学理学部物理学科卒業。1989年同学大学院理学系研究科博士課程修了。現在は東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻広域システム科学系教授として教鞭を執る傍ら、複雑系科学研究者として、アートとサイエンスの領域を繋ぐ活動も精力的に行う。渋谷慶一郎とのプロジェクト「第三項音楽」の提唱や、新津保とのプロジェクト「MTM」を2010年3月20日からYCAMで発表するなど、その活動は多岐にわたる。
著書:『動きが生命をつくる-生命と意識への構成論的アプローチ』(青土社) 共著:『複雑系の進化的シナリオ』(朝倉書店)『ゲーム-駆け引きの世界 (東京大学公開講座)』(東京大学出版会)など。 ※全文提供: フォイル・ギャラリー

最終更新 2010年 3月 12日
 

関連情報


| EN |