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ヴィルヘルム・サスナル:16mm films
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2010年 3月 02日

《Love songs》2005年|16mm film | 画像提供:ラットホールギャラリー | copyright(c) Wilhelm Sasnal

作家にとってこれが日本における初めての個展となります。今回は彼の作品の中でも日本ではあまり知られていない16㎜フィルム作品を中心とした展覧会となります。ヴィルヘルム・サスナルは1972年、ポーランド・タルノフ生まれ。クラクフ芸術アカデミーの絵画科を卒業し、雑誌のイラストレーターとして仕事をする傍ら制作活動を続けます。2000年頃から国際的にも注目を集めるようになり、ポーランド国内外の多くの展覧会でその作品が知られることとなりました。 画家としてのキャリアが先行している印象のあるサスナルですが、その一方で写真、ドローイング、ビデオそして今回展示する16mmフィルムなど様々なメディアを使った作品を発表しています。制作活動の中心のひとつである絵画制作においては、写真を基にしたもの、身近にあるオブジェ、友人達などその主題も、また具象、抽象といった手法も非常に多岐にわたります。数日、時には一日で一点を描き上げるという極めて多作の作家でありながら、主題や手法を固定せず、ある一定の距離感を保ち、主題を客観的に捉えた制作を行なっています。一方でそうした客観性を持ちつつ、時に主題として政治的および社会的なテーマをとりあげ、見るものに現実社会がはらむ問題を、あくまでも主観を排した形で喚起しています。こうした姿勢は今回上映する彼の16mmフィルム作品でも同様に見られます。ポーランド出身で、母国が社会主義から民主主義に転換するという大きな変革期に青春時代を送り、現在も生地であるタルノフで制作を続けていることから、いわゆる東欧美術の文脈から語られることの多い彼の作品ですが、実際にはポーランドだけでなく、より地理的にも広範囲で制作されていることが映像作品から見てとれます。また、一方で日常生活における身の回りを使った作品、言語テキストを使ったものなど、彼の絵画作品の源泉ともいえる作品です。ドキュメンタリー的要素を持つものも多く、絵画同様に客観性を保持し撮影対象のリアリティを写し出します。さらに映像という手法により彼自身が作品制作への影響を公言している音楽要素が多分に含まれ、撮影対象との距離の振幅を増進させる効果をもたらす、あるいは音楽自体が持つ意味を具現化した作品となっています。

今回は、16mmフィルム作品3本と、展示される16mmフィルム作品に相応しい絵画作品が彼自身によって選ばれていることにより、彼の絵画作品でしばしば指摘される「映像的フレーミング」がより具体的な形で理解できる展示となっています。

主な個展
2009 Kunstsammlung Nordrhein-Westfalen K21, Dusseldorf, Germany
2008 Galleria Civica di Arte Contemporanea, 'Wilhelm Sasnal. Lata Walki / Years of Struggle', Trento, Italy
2007 Zacheta National Gallery of Art, 'Wilhelm Sasnal. Lata Walki / Years of Struggle', Warsaw, Poland
2006 Center of Contemporary Art Ujazdowski Castle, ‘At the Very Center of Attention Part 10: Wilhelm Sasnal – USA’, Warsaw, Poland
Van Abbe Museum, ‘Wilhelm Sasnal. Paintings and Films’, Eindhoven, Netherlands
2004 Camden Arts Centre, London, England
2001 Foksal Gallery Foundation, ‘Samachody i ludzie / Cars and Men’, Warsaw, Poland

主なグループ展
2008 Carnegie Museum of Art, ‘55th Carnegie International’, Pittsburgh PA, 5th Berlin Biennial of Contemporary Art, ‘When Things Cast no Shadow’, Germany
2007 Museum of Modern Art, 'What is Painting?', New York NY
2006 エッセンシャル ペインティング 国立国際美術館、大阪
2004 Stedelijk Museum, 'Time and Again', Amsterdam, Netherlands
2002 Kunsthalle Basel, 'Painting on the Move', Basel, Switzerland
Musée d'Art Moderne de la Ville de Paris, 'Urgent Painting', Paris, France

※全文提供: ラットホールギャラリー

最終更新 2010年 4月 02日
 

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