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関口正浩:平面B
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 2月 18日

画像提供:児玉画廊 copy right(c) Masahiro SEKIGUCHI / Kodama Gallery

関口は現在京都市立芸術大学の博士過程に在籍しておりますが、その作品からはまさに次世代のペインティングにおける新たな動向の芽生えを予感させます。弊画廊では、若手の作家をいち早くピックアップするプログラム、Kodama Gallery Project において自身の初個展「うまくみれない」をフィーチャーした後グループショーやアートフェア等でも積極的に紹介し好評を得ております。 関口の描画手法とは、いわゆる刷毛やナイフによるものではなく、まず樹脂版に油絵具を塗り伸ばし、それらを生乾きの状態ではがして皮膜を作り、それをキャンバスに貼り付けるという方法が取られています。貼り付ける際には接着剤代わりに絵具を使用しながら、上に上にと何層にも皮膜を重ねていく事で、最終的には一枚の「平面」として完成されつつも、その実、重層的に内在された様々な色彩と皮膜の重なりによって有機的でポリフォニックな3次元的「平面」となっています。色彩の皮膜が重ね合わされる際に偶然生まれる皺や破れ、増幅され続ける張りと緩みのリズミカルな緊張感、作業中についた指の跡や絵具の飛沫までもが相互に作用し合い次第に一つのテクスチャーを成していく様は、多少の拡大解釈をするならば、筆で塗り、乾かし、重ねていくオイルペインティングのプロセスそのものであって、キャンバス上で時間の経過とともに色面が作られるのではなく、一定のプロセスをすでに経て作られた色面をキャンバス上に突如出現させるという大きな逆転があるにせよ、それはまぎれもない「オイル・オン・キャンバスのペインティング」として成立しています。 しかしながら、そうした特殊なプロセスを用いる事によってまるでテキスタイルやコラージュのようである、という既視感を抱かせ、あるいは画面構成を一目見れば過去数多存在した色面構成の抽象絵画の模倣として看做される可能性は想像に難くないですが、であればこそ、そうしたやや批判的な視点で見れば見る程に関口の特異性が際立つとも言えます。膜である以上、色彩そのものがソリッドなのであり、キャンバスに乗る前段階として既に絵具としての流動性から離れた性質へと変化している事によって、単純に「色彩」という視覚情報的な概念に留まらず、関口自身がそうしているように、触れる、伸ばす、千切る、手触りと体感的な行為で扱い得る「物」であるという前提、それが故に、塗るという行為の範疇では到達し得ない関口の特異性、「面」としての表情が成立しているのです。今回発表される新作では、多様な色彩の膜を端切れのようにし、キャンバス上に散りばめる構成をしています。初個展時には、特定の一色を作品ごとにフィーチャーし、それはまさしく膜による平面であることを実証するかのようでしたが、今回は対照的に膜の断片を多数用いることで皺や襞がより誇張され、それらが色彩の膜であるという構造上の特異性と同時に、それと連関して色彩が物質感を伴って自立するという視覚的な効果によってもその異彩を放っています。 在籍する研究室の部屋の名前から付けられた「平面B」という今回のタイトル、取って付けたようでありながら、言外には、AではなくBである、つまりはおよそ特異点としての自己を静かに断言しているのかも知れません。 ※全文提供: 児玉画廊

最終更新 2010年 2月 20日
 

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