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春草絵未:ただいまと地平の影へもぐりこむ線を結んで空のそのさき
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 2月 06日

Courtesy of the artist and Ohshima Fine Art copy right(c) Emi HARUKUSA

創作について
白地の画面に、繊細な彩色でなにやら浮かんでいる。
いつもは目にも留めない花や蟲や金魚などの小さな存在や、TVアンテナや電線などがある。
普段は、主役になれないものをメインに据えているのが印象的である。 春草は、移動の手段にバイクを使っている。
本人の容姿や作品から受けるイメージとかけ離れているようだ。人は誰でも二面性を持っているのが見受けられる。
バイクの疾走感に対してゆったりとした時間が流れる作品、一見朗らかで和む画面に紛れるスパイスのあるモチーフ…。
両極に振れているものが、春草の表現にある。 バイクの楽しさは言うまでもなくその“自由さ”に尽きる。
2輪で動く車体は4輪より明らかに不安定だ。
自由という喜びを享受するには、何かしらのリスクを全面的に自分が引き受けて成り立つ。
作品上の浮遊感のある自由は、メッセージ性がないような表現というリスクと共存しているだろう。
そのことは作家にとってどちらでもよく、日々淡々と描き続けていくだけだ。
これらの創作は、春草が限りなく綴る抒情詩のようなものだから。
実際、春草は詩を書いたり、短歌を詠んだりもしている。 いわゆる脇役で、いたって地味にみえる色んなモノがこの世界を構成している。
取り立ててトピックスのない普通の日常が、自分の人生をカタチ作っていくのだ。
小さな一日一日の歴史は、ずっと積み重なっていく。
あたかも、春草の作品が上下に左右に拡がっていき、また、何も描かれていない空間がただそこに在る様に。 展覧会について
タイトルとした短歌『ただいまと地平の影へもぐりこむ線を結んで空のそのさき』は、春草絵未が、日常と創作の日々を詠ったものである。 「自分たちが見ている世界のほかに、視点をずらすと別の世界がいくつもある」と春草は感じている。
春草は下町で生まれ暮らしているが、その界隈と比べると都心の高層ビル群などは同じ東京都内なのに違う世界のようだ。
現実と並行する別の時空をそれぞれ丁寧に描線で結んでいくことで『空のそのさき』へ繋がっていける。それは、何でもない普通の日常と思索の創作の日々の積み重ねが作品に結実していくことでもある。 画面の白い“地”は、もちろん、ただの余白ではない。
何も無い単なるスペースではなく、東洋的な解釈の“空”でもあるだろう。 その余白、すなわち“間”とは、見る者と作品が呼吸する空間でもあり、我々の向かう方向性と観点を自由奔放に飛び立たせてくれる。 今回の展覧会は、此処ではない何処かへいける入口を示す“みちしるべ”と捉えられるだろう。そして、春草の言う「自分が風景を見るのではなく、自分が風景となって世界を見る」という自由を得るのだ。 略歴
1978 東京生まれ
2002 女子美術大学 芸術学部絵画学科 日本画専攻卒業 個展:
2003 「歩く地平線」 GALLERY ART WADS 東京
2004 「うららか」 月光荘画室1 東京
2007 「葉々乱舞」 MOTT Gallery 東京
2008 「Aqua Leaf」 Ouchi Gallery ニューヨーク グループ展:
2003~9  GEISAI#3~#13 
2009 「super competition vo1 in NYC」出品 Ouchi Gallery ニューヨーク、 「Unbleached Vol.6」 GALLERY TRINITY 東京 ■オープニングレセプション:3月 5日(金)17時~19時30分 ※全文提供: Ohshima Fine Art

最終更新 2010年 3月 05日
 

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