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真島直子:密林にて
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2010年 3月 09日

《密林にて》2009年|紙に鉛筆|114×300cm|撮影:福岡栄|写真提供:ガレリア フィナルテ | copyright(c) Naoko MAJIMA

真島直子は、国内はもとより、マドリッドアートフェア・ARCOにおけるミヅマブースでの個展(2008)、パリのクロード・サミュエルギャラリーのグループ展(2008)、また、アントワーヌ・ドゥ・ガルベール氏の個人コレクション展での作品展示(2009)など、近年、海外において目覚ましい活躍をみせています。

本展は、真島が長年に亘り発表し続けている鉛筆による絵画作品と様々な材料を用いて作られるオブジェで構成されます。 下書きなしに制作される鉛筆絵画は、一本の線からまた一本と、線が線を呼ぶように増殖していき、線はやがて束を作り、渦を形成していきます。強弱のついた筆圧で描かれるモノトーンの世界は実際には見たことがない、だが、どこか懐かしいシーン(情景)です。私たちの中には太古からの生命の記憶が途方もない年月の分だけ存在すると話す真島が描く鉛筆画は、水に揺らめく藻や微生物、精子や血管、さらには体の内部を連想する描写で溢れています。それは心奥深くに眠りずっと私たちが気づいていない深層世界なのかもしれません。

色とりどりの糸と模様のついた布などを用いてつくる鯉や人型のオブジェは、まじまじと見るのが憚られる非実在の姿を見せているのにも関わらず、生き物の息づきと気配を私たちに感じさせます。モチーフに頻繁に採用される鯉は、別の生命体にも見える糸を体に張りつかせこの世のすべての感情(喜怒哀楽)を飲み込まんばかりに口を開けて迫ってきます。これらのオブジェは「ニュルニュルニョロニョロ」と私達の心ににじり寄り、日頃は無意識な「生」と「死」の存在を強く思い起こさせます。 「生」と「死」について畏怖の念を抱いていると話す真島の想いは「密林にて」の題名にも現れています。「未踏の地に生命力を再発見したい」と話すそこは、まばゆい色彩と野生の命が躍動する場所であり、同時に進化を知らない原始の生き物が生理に従って剥き出しの情念を見せる立ち入り難い世界です。

しかしよく見てみると、そこには理性や洗練という言葉では捉えきれない輝きがあり、それ故に清らかな美しさが出現しています。こうした真島作品の深淵な世界を、鑑賞者自身の眼で発見してもらうことを期待しています。

※全文提供: ミヅマ・アクション

最終更新 2010年 3月 10日
 

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