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café discasso
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2009年 12月 06日

画像提供:art & river bank

今夏、art & river bank は、「杉田敦+art & river bank」名義で、第4回越後妻有アートトリエンナーレに参加しました。“critics coast”(批評家の海岸)と名づけられた作品は、ビデオ・アーカイヴの常設展示と、毎週末のディスカッション・イヴェントから成り、会場となった松之山温泉よりさらに西に位置する湯之島(浦田地区)の民家はart & river bank の作家たちによって改装され、ディスカッションのために素敵なウッド・デッキも設えられました。ビデオ・アーカイヴの展示“dictionary” で上映された映像は、国内外の批評家やキュレータ、アーティストをビデオ・インタヴューした別プロジェクト“Oral Critic Archive”のために撮影されたもので、中越の豪雪地帯の納屋に無造作に置かれたモニタの中で仄光る、ハンス・ウルリッヒ・オブリストやフー・ファン、長谷川祐子ら、アートの第一線で活躍する方々の姿は、越後妻有の参加作品の中でも異彩を放つものとなりました。

週末のディスカッションは文字通り“discussion”と名づけられ、“dictionary”の参加者も招いて、3~5人による討議を計5回行いました。“discussion”は毎回異なるテーマで行われましたが、越後妻有という地域や文化の特殊について語るのではなく、アートや教育、世界など、一見すると大げさなものについてあえて討議を行うこととしました。越後妻有という特殊な環境にいるからこそ、世界やアートそのものについて言及することができるのではないか。そこには、ミクロとマクロの転置にも似た事態に対する密やかな期待が込められていました。

会期中から、討議の様子のドキュメントを閲覧したいという要望が多くありました。今回の展示はそうした要望に応えるためのもので、ディスカッションを行ったウッド・デッキのカフェ“discasso”を再現し、ディスカッションのダイジェスト閲覧することができるようになっています。また最終日には、新たに6回目のディスカッションも行います。越後妻有に行けなかった人はもちろん、訪ねていただいた方々も、ぜひ足をお運び下さい。

なお、“café discasso”では、越後妻有と同様、ポルトガルの微発砲ワイン、ヴィーニョ・ヴェルデなどカフェ・メニューもご堪能いただけます。お楽しみに!

関連イベント:
#006 discussion “ アート・プラクティス” 2009年12月12日(土) 17:00-
稲垣立男(アーティスト、法政大学教授)、北澤憲昭(美術評論家、女子美術大学教授)、小中大地(アーティスト)、杉田敦(批評家、女子美術大学教授)

※全文提供: art & river bank

最終更新 2009年 11月 21日
 

編集部ノート    執筆:平田剛志


この「カフェ」では、アジア、戦争、エデュケーション、写真、アーカイヴ、世界についてディスカッションが行われている。私たちは、それぞれが好きなディスカッションを眺め、聞けばよい。 熱を帯びたディスカッションはどれも聴き応えがあるが、ビデオに写る越後妻有の風景、北川フラム氏のタバコを吸いながら話す身振りなど、これまでのディスカッション記録映像とは異なる夏の空気や越後妻有の自然、ディスカッション参加者間に漂う空気が伝わってくる。もしかするとディスカッションの映像記録とは、討議された内容とともに、その場の空気を伝えることも重要なのかもしれない。それは、作家がどこで制作をするかを選ぶのと同じように、ディスカッションをする人々もまた、どこでディスカッションをするかによって、場の影響が少なからずあるのではないか。 補足説明をすれば、今展は越後妻有アートトリエンナーレ2009に杉田敦+art & river bankとして出品した「critics coast(批評家の海岸)」の会期中週末に行われた5回のディスカッションを映像としてまとめ、展示・上映する東京凱旋展である。越後妻有で展示されていたビデオ・アーカイヴ作品「dictionary」は出品していないのでご注意を。会期最終日12月12日(土)には、第6回目のディスカッションも行われる。越後妻有は遠くて行けなかった人は、今度はカフェの末席に身を置き、その「空気」を形作る1人としてディスカッションに参加してほしい。


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