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冨井大裕:新作展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 11月 24日

画像提供:switch point copyright(c) Motohiro TOMII

作られるものの定義
・どのような状態であっても物体であること
・物体が単位であり、全体は単位に備わった色と形、寸法、能力によって構成される。結果、全体の印象の原因が、必ず単位である物体に帰納されるもの
・寸法、形体、色が、置かれる空間や人間のサイズ(身長および各部位、物体に触れている部位)との関係により導かれるもの=現実を受け入れたもの
・空間の中で人間が関わるもの(見上げる、見下ろす、近づく、離れる、向かい合う、包まれる、探す…)
・一般常識として習慣的に行ってしまう動作と、個人的についやってしまう何気ない対応。その肯定と特化によってつくられるもの
・様々な物事と関わるなかで、数年後も思い出す物事によってつくられるもの
・成り立ちが全て見えているもの=そこで何が行われたかがわかるもの
・どのような状態であっても物体であることを、その成り立ちが主張するもの
・完全にコントロールされたもの(偶然も対象となる)=何度でもつくることができるもの
・どのような場所でも制作が可能なもの=特別な技術を必要としないもの
・必ずしも所蔵されることや永続性を目的としないもの
以上の定義によってつくられるものを、私は作品とよぶ
以上の定義によって私がつくるものを、私は彫刻とよぶ
-冨井大裕

ごくたまに、四コマ漫画で、一度ならず、二度三度と、くりかえし読んでしまうことがある。オチも何も、わかってしまってもなお、面白い。面白さがとどまっている。そんな気がして、同じ感情がそのつど、自分のなかに新しく、あらわれる。冨井大裕さんの作品にも、ぼくはおなじ面白さを感じる。タネもシカケもわかっているのに、ずっと見てしまう。むろん、四コマ漫画みたいに、何かが描かれているわけではない。人間がいないし、話がない。カラッポだ。そう、タネもシカケもないのだ。これがほんとに、こわい。そして、そこに、底なしの面白さがある。
-福永信(小説家)

冨井大裕(とみい・もとひろ) 略歴
1973 新潟県に生まれる
1997 武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業
1999 武蔵野美術大学大学院造形研究科彫刻コース修了(修了制作優秀賞受賞)、第4回アート公募2000審査員大賞受賞
展覧会歴多数。

※全文提供: switch point

最終更新 2009年 11月 19日
 

編集部ノート    執筆:平田剛志


色とりどりの折り紙がロール状に丸められて、ユニットを構成する折り紙彫刻。おそらく完全にコントロールされた形態として存在しながら、折り紙という脆弱な素材に連結部分としてホッチキスが付加/負荷しながら自立する構造は彫刻の魅力を発散してやまない。まさに折り紙付きの展覧会。その展示の色彩感は岡崎幹二郎の絵画「ゼロサムネイル」シリーズを思い起こした。 なお、本展には小説家・福永信氏が「冨井大裕さんの新作個展に寄せて」という小文を執筆している。冨井大裕について書かれた文章で、これほど魅力ある文章に接したのは初めてだったが、さらにそのテキストを素材に立体作品まで制作され、美術とテキストのコラボレーションを見ることができるだろう。なお、配布されているテキストの裏面には、立体にする為の指示書までご丁寧に書かれているので、ご自身でも作ってみることをおすすめする。


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