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白髪一雄:格闘から生まれた絵画
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 11月 07日

白髪一雄制作風景|画像提供:横須賀美術館

日本におけるアクション・ペインターの先駆けとして知られる白髪一雄(1924-2008)は、具体美術協会の代表的な画家であり、戦後の美術を語る上で欠かせない存在です。白髪はキャンバスを床面に置き、その上を滑走するようにして足で描くという独自の手法により、力強く躍動感のある絵画を達成しました。その行為と物質が結びついた絵画は、世界的にも高く評価されています。白髪は具体美術協会解散後も精力的に活動を続けていましたが、2008年に惜しまれながらも亡くなりました。

本展では、没後初めての回顧展として、白髪が生前構想していたシリーズ区分による展示を採用し、油彩約50点を中心に展示を行います。これらには、<水滸伝>シリーズや、<中国古代歴史>シリーズといった、白髪の代表作が含まれます。これには、足描きによるダイナミックなマチエールを生かした作品群や、板を用いて絵具の流れを生かした実験作のほか、斧を振り下ろした痕跡を残す《赤い丸太》などをご紹介します。また、それに加えてアクション・ペインティングに至る過程を示す初期の油彩群や、制作の背景を示す資料や映像を併せて展示し、白髪の60年に及ぶ画業の全貌を紹介します。本展は、全国4会場を巡回する展覧会であり、横須賀の会場では、関東で初めての本格的な個展となります。

※全文提供: 横須賀美術館

最終更新 2009年 10月 31日
 

編集部ノート    執筆:平田剛志


日本におけるアクションペインティングの先駆者として知られる白髪一雄(1924-2008)の関東では初めての本格的な回顧展。しかし、当たり前のように「アクションペインティング」などという言葉を冠してしまったが、足で描くというその特異な技法ばかりに関心が向けられ、この画家の作風の変化に眼を向ける機会を逸してきたことは事実だろう。 しかし、白髪の求道的な絵画への思考(試行)は、60年にも及ぶ絵画に痕跡として残されている。今、私たちに求められているのは絵画の背後にある技法などではなく、眼の前の絵画と対峙することだ。 本展では<初期作品>、<血のイメージ>、<密教シリーズ>、<歴史への憧憬>、<アプローチの多様性-題材・技法・画材>、<資料>の6セクションによって、白髪の画業の一端が明らかにされていくだろう。 国内の美術館の常設展示でよく見かける白髪一雄作品だが、意外とまとまって見る機会は少ないため、本展は貴重な機会である。


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