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転位
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 10月 27日

阿部大介≪無題≫2008年|樹脂系エマルジョン、油性インク、紙|1570X1120mm, ed.5 |画像提供:画廊翠巒 copy right(c) Daisuke ABE

廣澤仁≪野焼≫2008年|紙にシルクスクリーン|1080X1080mm、ed.3|画像提供:画廊翠巒 copy right(c) Jin HIROSAWA

私たちは、初対面の人について知るときや、人を紹介するとき、その人の顔や身長などの外見的特徴や、仕事や地位などの社会的属性をもって、その人を理解をしたつもりになっているのではないかと思います。しかし、私自身のことを他人に理解してもらおうとするほど、外見的特徴や社会的属性では足りないと感じるはずです。また、他人に対しても、身近に感じたいと思えば、その人のプライベートや、何を考えているかまで知りたいと思うものです。何かに対して距離を縮めたいと思えば、あらかじめつくられた枠組みの中から外れていかざるを得なくなるのだと思います。 阿部大介は、木や布といった素材の表面を、触覚的で生々しい形に転化させ、物質やイメージが持つ意味、性質を、行為、工程媒体を経て揺らいだ状態で表出させる作品をつくっています。 廣澤仁は、スクラッチなどによって描いたドローイングを、シルクスクリーンを用いてキャンバスや紙の上に分厚く転写させて、スピード感や凶暴性などを感じさせながらも、一方では、対象や描くことに距離を感じさせる作品をつくっています。 山田純嗣は、自ら制作した立体の写真に、独自の手法で手を加え、写真or絵画、立体or平面、といった素材や手法のはっきりとしない混沌の中から、作品を前にしたときに感じる、純粋な深層感覚を立ち上がらせる作品をつくっています。 彼らは、ものの姿を様々な方法で変化、転化させることで、作品の核心にあるものを探ろうとしています。それは、学生時代に版画を習得した彼らにとっては自然な流れかもしれません。しかし、彼らはあらかじめ用意された従来の「版」の枠組にとどまることなく、独自の法則に基づいて制作をしています。その行為は、ジャンルなどの属性では語ることができない、作品の核心に近づこうとした結果なのではないでしょうか。 「転位」と題したこの展覧会から、枠から外れたところにある核心について感じもらえたら幸いです。

阿部大介
1977年 京都生まれ/2002年 京都精華大学芸術学部造形学科版画卒業/2004年 愛知県立芸術大学大学院美術研究科修了/2005年 「Independent イメージと形式 2005」(愛知県美術館ギャラリー)/2007年Duble Reality(愛知県美術館ギャラリー)/EXTRA NUMBER 0807(AIN SOPH DISPATCH・愛知)/2008年 overflow(画廊翠巒/群馬)/2009年 Works and Days(GALLERY ALPHA/愛知)、image print project show(ギャラリー早蕨/愛知)/落石計画第2期/Scattered Seeds 残響(旧落石無線送信局跡/北海道)他 [個展] AIN SOPH DISPATCH・愛知INAXギャラリー・東京 [Public Collection] 愛知県立芸術大学芸術資料館・町田市国際版画美術館・Silpakorn University(バンコク)

廣澤 仁
1976年 山口県防府市に生まれ/1998年 全国大学版画展(町田市立国際版画美術館)/1999年 武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業・卒業制作展 優秀賞/第67回日本版画協会展 山口源新人賞(東京都美術館)/2001年 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コース修了/2008年VISIONS-増殖するイメージ-(日本橋高島屋美術画廊X)/Session(Alternative Space CY・東北芸術工科大学)/ビエンナーレKUMAMOTOⅣ・準グランプリ(熊本県立美術館)/2009年 武蔵野美術大学非常勤講師/8th World Art Print Annual – Mini Print 2009 (ブルガリア)[個展] ギャラリーイセヨシ(東京)・23ギャラリー(東京)・ギャラリー山口(東京)・ギャラリーゆう(大垣)・柳沢画廊(川越)他 [Public Collection]山口町田国際版画美術館・沼津市・國立台灣美術館

山田純嗣
1974年 長野県飯田市生まれ/1997年 愛知県立芸術大学美術学部油画専攻卒業/1998年/現代日本美術展(東京都美術館・京都市美術館)同‘99・’00)/全国大学版画展買上賞/1999年 同大大学院美術研究科油画専攻修了/熊谷守一大賞展優秀賞/2000年 日本版画協会展奨励賞/2001神奈川国際版画トリエンナーレ2001神奈川芸術文化財団賞/2004年個展(はるひ美術館)/2006年 VOCA2006 現代美術の展望-新しい平面の作家達(上野の森美術館)/2007年 アートフェア東京2007(東京国際フォーラム)同’08/2008年現代の造形 Life & Art(東広島市立美術館)/2009年 絵画をめぐって-The Pure Land-(中京大学C・スクエア)[個展]不忍画廊(東京)・東京日本橋高島屋美術画廊X・画廊翠巒(前橋)他 [Public Collection] 町田市立国際版画美術館・神奈川芸術文化財団・はるひ美術館・国立台湾美術館他

※全文提供: 画廊翠巒

最終更新 2009年 10月 24日
 

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