| EN |

河口龍夫:言葉・時間・生命
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 10月 21日

≪関係-生命・鉛の温室≫1999年| 撮影:斎藤さだむ|画像提供:東京国立近代美術館

金属、エネルギー、天体、化石、植物など、さまざまなものを用いて、過去から未来にわたる遥かな時間や、生命の不思議に、見る者の想像力を誘う現代美術作家、河口龍夫。その40 年以上にわたる活動の全貌を、過去の代表作と新作、計約150 点で紹介します。

10 万年後の北斗七星は、どんな形なのでしょうか?地球の内部から、世界を眺めてみたら・・・?河口龍夫(1940 年、兵庫県神戸市生まれ)は、1960 年代から今日に至るまで、現代美術の最前線で活躍を続けているアーティストです。彼は、鉄・銅・鉛といった金属や、光や熱などのエネルギー、さらに化石や植物の種子など、さまざまな素材を用いながら、物質と物質、あるいは物質と人間との間の、目に見えない関係を浮かび上がらせようという一貫した姿勢で制作を続けてきました。

私たちの想像力をフルに刺激する作品が並びます。

東京の美術館では初の個展となる本展では、40 年以上にわたる河口龍夫の制作の歩みを、「ものと言葉」「時間」「生命」というキーワードのもとに3 つの章で構成し、それぞれのテーマによる主要作品を紹介。また、全長8m の木造船を使った《時の航海》をはじめ、新作もたくさん用意されています。過去の主要作品と新作が同じ空間に並んだ時、見る人に新たな想像力をもたらします。

「芸術は人間の精神に何らかの作用をおよぼすもののようです。その作用は、例えば精神を高揚させたり、未知なる感覚を享受させたり、好奇心を駆り立てたり、心を健康にさせたり、快と不快を同時に感じさせたり、コモンセンスからナンセンスへの面白さを感じさせたり、日常を超えた非日常を知覚させたりしますが、とりわけ、私を精神の冒険に誘い、私は誘われます。その意味では、芸術は精神の冒険のような営みと言えると思います」 - 河口龍夫

彼の作品の前で五感を研ぎ澄ませ、想像力をひろげるとき、私たちは、ものに対する新しい認識の仕方に驚かされたり、人間のスケールを超えたはるかなる過去・現在・未来の時間の流れに思いを馳せたり、あるいは生命の不思議に触れることになるでしょう。

全文提供: 東京国立近代美術館

最終更新 2009年 10月 14日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


河口の作品は一見しただけではよくわからない。であるばかりか、よく見てもわからないものが多い。だから展覧会を訪れ、わからないからといって自分を卑下する必要はない(皆わからないのだから)。河口の作品はむしろ、その〈わからなさ〉に向かって、積極的に思考を掘り下げてはどうかと私たちに問いかける。展覧会タイトルにあるように、本展のテーマは「言葉•時間•生命」だ。それらのいずれも私たちの〈生〉と不可分であることは言うまでもないだろう。河口の作品を見る、というよりもその作品と相対することは、すなわち私たちの生きるこの世界の深淵について自らの頭で考えることにほかならない。世界についての思考が一筋縄ではいかないように、河口の作品もまた、簡単ではないがゆえに誠実である。 鑑賞にあたり手助けが必要ならば、会場の章毎の解説パネルとキャプションに加え、入口で配布されている会場案内には担当学芸員による丁寧な作品解説がある。カタログにはより仔細な小論二本に加え、河口による文章も掲載されている。合わせて参照されたい。


関連情報


| EN |