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笹井青依:Lilac in Harbin
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2019年 1月 26日

《Sun Waterfall》 2018 Oil on canvas 162x194cm

笹井青依は1986年神奈川県生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コースを修了。ニュートラルなグレーの空間を背景に、デフォルメされた木々を描き、その独自の世界観が高く評価されています。笹井がこれまで一貫してモチーフとしてきたのは、山や森に茂る野生の樹木ではなく、人が何かの目的のために植えた、日常の中にあるごく身近な木です。
2018年5月、笹井は中国のハルビンを旅しました。ハルビン市の花にも制定されているライラックを見るのが旅の目的だったといいます。街のいたるところに植樹されたライラックは、初夏になると薄紫や白やピンクの花を一斉に咲かせ、良い香りを漂わせます。笹井は、この旅で見たライラックをモチーフに選び、新作に取り組みました。今回の出品作に1点だけ、滝を描いた「Sun Waterfall」という作品があります。一見すると柳の木のようにも見えますが、この作品に描かれているのは、ハルビンの観光地として知られる太陽島の「太陽滝」という人工の滝です。2012年に開催された個展以来、木ではないモチーフが登場したのは今回が初めてで、注目すべき点の一つと言えます。また、背景の色にも変化が窺えます。これまではグレーを基調としていましたが、今回は淡い茶色や緑が使われています。これまでの作品は夜に見た木を描いていたのに対し、本作は昼に見た木を描いているということが影響しているのかもしれません。
ロシア風の建築物も多く残され、異国情緒ある美しい街、ハルビン。戦争の文脈で語られることもあるこの街で、1986年生まれの笹井は、一体何を見て、何を感じたのでしょうか。笹井が描かなかったものは何なのか。笹井の絵画は、声高に何かを語ったり、糾弾したり、何かを想起させたりするものではありません。しかし私たちは、笹井の絵画と向き合うことで、静かに内に秘められた強靭な精神を感じ取ることができるでしょう。本展では、キャンバスに油彩で描かれた新作絵画8点余りを展示いたします。どうぞご高覧ください。

http://www.andogallery.co.jp

全文提供:アンドーギャラリー


会期:2019年2月5日(火) 〜 2019年4月13日(土)
時間:11:00-19:00
休日:日・月・祝日
会場:アンドーギャラリー

最終更新 2019年 2月 05日
 

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