おそらく私の美意識や価値観の持つリアリティーは、戦後モノに溢れた社会の中で、マスメディアがもたらした、多量な情報を日々取捨選択してきた中から確立されてきたのであろう。しかしそのことはまた文明を作るにあたって巧妙に仕組まれた状況や環境から人間は決して自由になれないのではないか、という疑いのようなものを私にもたらすのである。マスプロダクトもそういった社会的状況から私が選択した事柄である。それらが複数性を持った人工的なカオスや危うい構造体として現れたとき、自然の秩序や無秩序といった象徴的な状況と重なり、個としての意識は困惑する。

恐怖とは個としての社会的な存在のなかに見える一種の幻影かもしれない。
－橘田幸之佑

略歴
1984 埼玉県生まれ
2007 日本大学芸術学部美術学科 彫刻コース卒業
2008 日本大学大学院海外派遣奨学生として渡英
2009 日本大学芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程在籍中

主なアートプロジェクト
2006 越後妻有アートトリエンナーレ2006「脱皮する家」
2008 Kingston University MA Show -BargeHouse Gallery、Carol+Palimpsest Pubric House -Barbican Centre (ロンドン）、Smash Beer Project-Knights Park (ロンドン)
2009 Falterling Structure-6x4 Gallery (ロンドン)、Come on :Peace of land art -Cao Yang (上海)

全文提供：　Nroom-artspace