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平川祐樹:映画になるまで 君よ高らかに歌へ
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2018年 5月 30日

映画になるまで 君よ高らかに歌へ 2018 Video installation, 4K UHDTV, stereo, 9'00"

平川祐樹は1983年愛知県生まれ。場所や事物に宿る「時間」や「記憶」をテーマに、映像を主軸とした作品を制作しています。2011年よりドイツを拠点に多数のアーティスト・イン・レジデンスに参加、2015年には文化庁新進芸術家海外研修員としてベルリンに滞在しました。主な展覧会に2013年「眠りにつくまで」(美濃加茂市民ミュージアム、岐阜)、「あいちトリエンナーレ2013」、「札幌国際芸術祭2014」、2016年「19th DOMANI・明日展」(国立新美術館、東京)などがあります。

アンドーギャラリーで初めての個展となる本展では、2017年より制作している「Lost Films」シリーズの第三作となる映像作品「映画になるまで 君よ高らかに歌へ」を発表いたします。壁に投影された黒い背景に、古い日本映画のタイトルと製作年が淡々と現れては消え、タイトルを朗読する男性の声が低く会場に響きます。一見するとタイトルの羅列のように見えますが、それぞれのタイトルにゆるやかな繋がりがあり、詩的な意味が垣間見えます。それらの映画は、かつて一般公開された日本映画で、雑誌やポスターなどに記録はあるものの実際のフィルムが残っていない「失われた日本映画」です。驚くべきことに、1930年代までに上映された日本映画のうち約95%のフィルムが行方不明になっていると言われています。その理由として、1940年代までの多くの映画が発火性のあるニトロセルロースを原料としたセルロイドフィルムを使用していたこと、映画フィルム保存に対する認識の薄さ、関東大震災や世界大戦の空襲による焼失などが挙げられます。平川は制作の過程で、失われた日本映画のリストを眺めていた際に、いくつかの映画タイトルがリストの中で繋がり、ひとつの言葉の流れを構成していることに気がついたと言います。それらのタイトルを抽出し並べ替えていくと、断片的ではあるものの、詩と呼べるようなものが完成しました。それは言わば、輝かしい映画史の背後で失われてきた日本映画の「声」なのです。「映画になるまで 君よ高らかに歌へ」は、張り巡らされた歴史の糸を絡め取り、黒い光としてスクリーンに投影し、失われた何千という膨大な数の映画の魂を呼び起こすでしょう。

http://www.andogallery.co.jp

全文提供:アンドーギャラリー


会期:2018年6月12日(火) 〜 2018年7月28日(土)
時間:11:00-19:00
休日:日・月・祝日
会場:アンドーギャラリー(〒135-0023 東京都江東区平野3-3-6)

最終更新 2018年 6月 12日
 

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